【陶芸初心者向け】電動ろくろの選び方|いきなり買うのは待って!私がたどり着いた結論

「いつかは自宅で、自分の電動ろくろを回してみたい…」

 

陶芸に興味を持った人なら、誰もが一度は夢見る光景ではないでしょうか。静かな部屋で、土の感触を楽しみながら、ひたすら器作りに没頭する時間。もう、最高ですよね。私もその一人でした。ネットでキラキラした電動ろくろを眺めては、「これさえあれば、私の陶芸ライフは完璧だ…!」なんて、カートに入れるボタンを何度も撫で回したものです。危なかった(笑)。

 

結論からお伝えします。もしあなたが陶芸初心者で、電動ろくろの購入を考えているなら、「ちょっと待った!いきなり買うのは絶対におすすめしません!」。まずはレンタルサービスを利用したり、陶芸教室に通ったりして、じっくり「お試し」から始めるのが、後悔しないための最短ルートです。断言します。

 

なぜなら、電動ろくろの購入は、あなたが思っている以上にハードルが高く、そして本体価格以外にも様々な「見えないコスト」や「手間」が潜んでいるから。私自身、その落とし穴にハマりかけ、すんでのところで回避できた経験があります。この記事では、そんな私のちょっぴり苦い(でも今となっては笑える)経験談を交えながら、初心者が本当に幸せな陶芸ライフを送るための、電動ろくろとの付き合い方を余すところなくお伝えします。

 

この記事を読み終える頃には、あなたは無駄な出費をすることなく、自分にぴったりの形で陶芸を始める第一歩を踏み出せるはずです。さあ、一緒に最高の陶芸の世界へ飛び込みましょう!

電動ろくろは買うな!まずはお試しから始めるべき3つの理由

 

「いやいや、どうせやるなら最初から自分の道具を揃えたいんだ!」その気持ち、痛いほどわかります。形から入るのって、モチベーション維持にめちゃくちゃ大事ですもんね。私もそうでしたから。でも、こと電動ろくろに関しては、その「形から入る」が、とんでもない悲劇を生む可能性があるんですよ…。ここでは、なぜ私がここまで必死に「買うな!」と叫んでいるのか、そのリアルな理由を3つ、私の心の叫びと共にお届けします。

いきなり買うと99%後悔する 私の危なかった話

あれは、陶芸の動画を見まくって、完全に「やる気」の沸点を超えていたある夜のことでした。スマホの画面には、スタイリッシュなデザインのコンパクトな電動ろくろ。レビューも上々。「今ならセール価格!」の文字が、悪魔のように私に囁きかけます。「これを買えば、明日から私も陶芸家だ…!」ポチッ。…と、する寸前で、ふと我に返ったんです。「え、待って。これ、どこに置くの?」

 

そう、これが第一の罠、「置き場所問題」です。電動ろくろって、写真で見るとコンパクトに見えるかもしれませんが、実際に部屋に置くと、かなりの存在感を放ちます。使わない時も、そこそこのスペースを占領し続けるわけです。最初は「いつでもできる!」と意気込んでいても、日々の忙しさに紛れて、だんだん触る頻度が減ってくる…なんてことはザラにあります。そうなると、どうなるか。ええ、ただの「ちょっと値段の高い、謎のオブジェ」と化すんです。最悪の場合、ホコリをかぶって物置の奥へ…。想像しただけで、悲しくなりませんか?数万円もした憧れのろくろが、ですよ。

 

それに、実際に使ってみて「あれ?思ってたのと違う…」と感じる可能性も大いにあります。土殺し(粘土の空気を抜いて均一にする作業)がうまくいかない、中心が出せない、すぐ形が崩れる…。動画で見るプロの優雅な手さばきとは、あまりにも違う現実に、心が折れてしまうかもしれない。そんな時に、目の前に鎮座する電動ろくろは、憧れの対象から「自分の不甲斐なさを突きつけてくるプレッシャーの塊」に変わってしまうんです。つらい、つらすぎる。だからこそ、まずはレンタルや教室で「自分は本当に電動ろくろと長く付き合っていけるのか?」を見極める期間が、絶対に必要なんです。

電動ろくろって、実は本体以外にもお金がかかるんです…

第二の罠は、「見えないコスト」問題です。電動ろくろの価格だけを見て、「よし、これなら手が届く!」と判断するのは、あまりにも早計。言ってみれば、ゲーム機本体だけ買って「さあ遊ぶぞ!」と言っているようなものなんです。え?ソフトがなきゃ遊べないでしょ?って話です。

 

まず絶対に必要なのが「粘土」。これがなければ始まりません。粘土にもいろんな種類があって、値段もピンキリ。最初は数キロあれば十分ですが、夢中になってくるとあっという間になくなります。次に「道具」。コテ、ヘラ、シッピ(作品を切り離す糸)、なめし革、スポンジ…などなど、基本的なセットだけでも数千円はかかります。こだわり始めると、これがまた沼なんですよね…。

 

そして、ここからが本番。作った器は、乾燥させて、素焼きして、釉薬(ゆうやく・うわぐすり)をかけて、本焼きして…という工程を経て、やっと完成します。釉薬も当然買わなければいけません。一色だけじゃつまらないから、何色か欲しくなりますよね?はい、出費です。そして最大の関門が「焼成(しょうせい)」。自宅に陶芸窯を持っている人なんて、ほとんどいません。つまり、どこか窯を持っている窯元や工房にお願いして、焼いてもらう必要があるんです。これを「持ち込み焼成」と言いますが、もちろん有料。作品の大きさや数によって料金は変わりますが、これが地味に、でも確実にお財布を蝕んでいくんですよ…。

 

「ろくろ本体の代金+粘土代+道具代+釉薬代+焼成代×作った数」…ほら、こうして計算してみると、初期投資とランニングコストが、思った以上にかかることが見えてきませんか?「こんなはずじゃなかった…」と後悔する前に、まずはトータルでどれくらいのお金が必要になるのか、冷静に把握しておくことがめちゃくちゃ大事なんです。

音、振動、粘土の処理…想像以上に大変な「自宅陶芸」の現実

最後の罠、これが一番厄介かもしれません。「住環境」の問題です。特にマンションやアパートにお住まいの方は、絶対に知っておいてほしい。電動ろくろ、想像以上に「音」と「振動」が出ます。

 

静音設計を謳っているモデルも多いですが、無音というわけにはいきません。モーターが「ウィーン」と回る音、粘土と手が擦れる音、そして何より、粘土を叩いて空気を抜く「土殺し」の時の「ドン!ドン!」という衝撃音。日中ならまだしも、仕事から帰ってきて「さあ、夜に楽しむぞ!」なんて思っていると、ご近所トラブルに発展しかねません。壁の薄いアパート暮らしの私には、正直、無理ゲーでした。

 

さらに、粘土の処理も本当に大変。作業中は、粘土の切れ端や泥水(ドベ)が、想像以上に周りに飛び散ります。床にシートを敷くなどの養生は必須。そして、使い終わった道具や手を洗った後の泥水、これをそのままキッチンのシンクや洗面台に流すのは絶対にNG!排水管が詰まる原因になります。土は水に溶けているように見えて、配管のカーブ部分などにどんどん沈殿していくんです。そうなったらもう、業者を呼んで高額な修理費を払うハメに…。考えただけでも恐ろしいですよね。なので、バケツに水を溜めてそこで洗い、泥が沈殿するのを待って、上澄みだけをそっと流し、底に溜まった粘土はゴミとして捨てる…という、地道で面倒な作業が必要になるんです。

 

この「準備」と「後片付け」の手間を考えると、「よし、やるぞ!」という気持ちのハードルが、ぐーんと上がってしまうんですよね。気軽な趣味のはずが、いつの間にか一大プロジェクトのようになってしまう。この現実を知らずに購入してしまうと、「こんなに大変なら、もういいや…」と、ろくろ自体が億劫になってしまう可能性大なのです。

じゃあどうする?初心者におすすめの電動ろくろとの付き合い方

 

「買うのがダメなのはわかった。でも、じゃあどうすればいいの!?」という声が聞こえてきそうです。大丈夫、安心してください。ちゃんと初心者でも電動ろくろを心ゆくまで楽しむ、最高の選択肢があります。ここでは、私が実際に試してみて「これだ!」と思った、2つの具体的な方法をご紹介します。あなたのライフスタイルや性格に合わせて、どちらが向いているか考えてみてくださいね。

まずは陶芸教室でプロの指導を受けるのが王道

なんだかんだ言っても、やっぱりこれが一番の王道であり、最強の選択肢だと私は思います。陶芸教室のメリットは、もう、ありすぎるくらいです。

 

まず、何と言っても「先生がいる」という安心感。これが計り知れないほど大きい。電動ろくろって、本当に最初の「土殺し」と「中心出し」がすべて、と言っても過言ではありません。ここでつまずくと、もう何も始まらない。独学だと、何が悪いのかもわからず、ただただ時間だけが過ぎていく…なんてことになりがちです。でも教室なら、先生が手取り足取り、文字通り「手を持って」教えてくれます。「あ、この角度か!」「この力加減だったのか!」という発見の連続。この「わかった!」という瞬間が、めちゃくちゃ楽しいんですよ。

 

それに、先ほどお話しした面倒な準備や後片付け、粘土の処理、焼成の手配など、すべて教室側がやってくれます。あなたはただ、手ぶらで行って、純粋に作ることだけに集中すればいい。これ、最高じゃないですか?仕事や家事で疲れている中で、趣味の時間くらいは、余計なストレスなく楽しみたいですもんね。

 

そして意外なメリットが、「他の生徒さんとの交流」です。同じ趣味を持つ仲間と「その形、いいですね!」「これ、難しくないですか?」なんて話しながら作業するのは、一人で黙々とやるのとはまた違った楽しさがあります。人の作品を見るのもすごく勉強になりますしね。人見知りの私ですら、自然と会話が生まれて、毎週通うのが楽しみになりました。まずは体験教室に行ってみて、その場の雰囲気や先生との相性を確かめてみるのがおすすめです。

自宅でじっくり試したいなら「レンタル」という選択肢

「教室もいいけど、やっぱり自分のペースで、好きな時間にやりたいんだよな…」という方もいますよね。わかります。周りの目を気にせず、納得いくまで何時間でも粘土と向き合いたい時って、ありますから。そんなあなたにこそ、試してみてほしいのが「電動ろくろのレンタル」です。

 

最近は、個人向けに電動ろくろを貸し出してくれるサービスが増えてきています。1ヶ月単位で借りられるところが多く、料金も購入するのに比べればずっと手頃。これなら、自宅で電動ろくろを使う、ということがどういうことなのか、リアルに体験することができます。

 

実際にレンタルしてみると、購入前に気づけなかったたくさんのことが見えてきますよ。「あ、やっぱりこの時間帯に使うと、音が気になるな」「思ってたより、片付けに時間がかかるな…」「週末だけじゃ、なかなか集中してできないかも」といったネガティブな発見もあれば、「夜中にパジャマ姿でろくろを回す背徳感、たまらない!」「好きな音楽をかけながら作れるの、最高!」なんてポジティブな発見もあるはずです。

 

このレンタル期間は、いわば「マイろくろ」を持つためのシミュレーション期間。この期間を通して、「これなら続けられそう!」と確信が持てれば、その時こそが購入のタイミングです。逆に「うーん、やっぱり後片付けが面倒だな。教室の方が楽でいいや」と思えば、レンタル期間が終わったら返却すればいいだけ。無駄な出費も、邪魔なオブジェも生まれません。ね、すごく合理的でしょ?購入という大きな決断をする前に、まずはこのレンタルというワンクッションを挟むことを、心の底からおすすめします。

レンタルと教室のメリット・デメリットを徹底比較してみた

「教室とレンタル、どっちがいいんだろう?」と悩み始めたあなたのために、ここで私の独断と偏見に満ちた比較をしてみたいと思います。どっちが良い悪いじゃなくて、どっちが「今のあなた」に合っているか、という視点で見てみてくださいね。

 

まず【陶芸教室】。
メリットは、先ほども言った通り「先生がいる」「準備・片付け不要」「仲間ができる」こと。とにかく手軽に、正しい技術を学びたい、失敗したくない、という方には圧倒的におすすめです。デメリットを挙げるとすれば、「日時が決まっている」ことと、「自分のペースで進められない」ことでしょうか。人気の教室だと、ろくろが空くのを待たなきゃいけない、なんてこともあるかもしれません。あと、月謝がかかるので、行けない週があるとちょっと損した気分になるかも(笑)。

 

次に【電動ろくろレンタル】。
メリットは、何と言っても「時間と場所に縛られない自由さ」。深夜だろうが早朝だろうが、やりたい時に好きなだけできます。教室ではできないような、ちょっと変わった形に挑戦してみたり、ひたすら同じものを何個も作る練習をしたり、なんてことにも没頭できます。デメリットは、もちろん「先生がいない」こと。行き詰まった時に、すぐに相談できる相手がいません。YouTube先生に頼ることになりますが、やっぱり直接見てもらうのとは違いますからね。そして、「準備から後片付けまで、すべて自己責任」であること。これが想像以上に重くのしかかる可能性は、覚悟しておいた方がいいです。

 

まとめると、こんな感じでしょうか。

 

・効率よく、ストレスフリーで技術を学びたいなら → 陶芸教室
・自分の世界に没頭して、試行錯誤を楽しみたいなら → 電動ろくろレンタル

 

まずは教室の体験に行ってみて、物足りなさを感じたらレンタルを試してみる、という合わせ技もアリだと思います。焦らず、じっくり自分に合うスタイルを見つけていきましょう。

それでも「マイろくろ」が欲しい!本気で選ぶ人のためのチェックポイント

 

さて、教室やレンタルを経験し、「私は、この先ずっと電動ろくろと生きていく!」と固く決意した、そこのあなた。おめでとうございます!いよいよ、憧れの「マイろくろ」選びのステージです。ここからは、後悔しない一台を選ぶために、絶対にチェックしてほしいポイントを、ちょっとマニアックな視点も交えながらご紹介します。カタログスペックだけじゃわからない、リアルな使い心地に関わる部分ですよ。

パワー(モーターの力)はどれくらい必要?粘土量との関係

電動ろくろ選びで、まず気になるのが「パワー」ですよね。カタログを見ると「可搬重量〇kg」とか「モーター出力〇W」とか書いてあって、正直「で、どれがいいの?」ってなりませんか?なりますよね。

 

結論から言うと、初心者がお茶碗や湯呑み、小鉢などを作るレベル(粘土量でいうと1kg〜2kg程度)であれば、市販されている家庭用の電動ろくろなら、どれを選んでもパワー不足で困ることは、まずありません。なので、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。

 

じゃあ、なぜパワーの差があるのか。それは、一度に使う粘土の量に関係してきます。例えば、直径30cmを超えるような大皿や、大きな壺を作りたい!という野望がある場合。これには5kg以上の粘土を使ったりしますが、こうなるとパワーの弱いモーターでは、粘土の重さと抵抗に負けて、回転が不安定になったり、止まってしまったりすることがあるんです。

 

「大は小を兼ねるって言うし、最初からパワーがあるやつの方がいいんじゃない?」と思うかもしれません。もちろんそれも一理あります。でも、一般的にパワーのあるモデルは、価格も高く、本体も大きく重くなる傾向があります。将来的に大物を作る「かもしれない」という不確かな未来のために、今の自分にはオーバースペックな高価なモデルを選ぶのが、本当にベストな選択でしょうか?

 

私の意見としては、まずは自分が「今、何を作りたいか」を基準に選ぶのが一番です。ほとんどの人は、家庭で楽しむ分には、標準的なパワーのモデルで十分すぎるほど満足できるはず。もし将来、どうしても大物を作りたくなったら…その時は、もっと良いろくろに買い替える、というのも素敵なステップアップだと思いませんか?

ドベ受け(泥よけ)は一体型?分割型?掃除のしやすさが大違い!

ここは声を大にして言いたい!電動ろくろ選びで、パワーや静音性よりも、私が一番重要視してほしいポイント、それが「ドベ受け」です!ドベ受けとは、ろくろの回転台(ターンテーブル)の周りについている、飛び散る泥水を受け止めてくれるパーツのこと。これの形状によって、作業後の片付けの手間が、天と地ほど変わってきます。マジで。

 

ドベ受けには、大きく分けて「一体型」と「分割型」の2種類があります。
「一体型」は、その名の通り、ドベ受けがガポッと一体になっているタイプ。メリットは、構造がシンプルで、泥水が隙間から漏れたりする心配がないこと。デメリットは、とにかくデカくて重いこと。これを外して、溜まった泥水を捨てて、洗う…という作業が、結構な重労働なんです。狭いシンクでは洗いにくくて、イライラすること間違いなし。

 

一方、「分割型」は、ドベ受けが2つ(あるいはそれ以上)のパーツに分かれていて、パチっとはめ込んで使うタイプ。こちらのメリットは、何と言っても「洗いやすさ」!片手でひょいと持てる大きさのパーツを、一つずつ洗えばいいだけなので、後片付けが圧倒的に楽ちんです。シンクが小さくても問題ありません。デメリットは、パーツの合わせ目から、ごく稀に水が漏れる可能性がゼロではない、ということくらいでしょうか。でも、ちゃんと設計された有名メーカーのものであれば、まず心配いりません。

 

掃除や片付けが嫌いな人(私のことです)は、もう絶対に「分割型」一択です。断言します。作っている時間は楽しくても、その後の面倒な片付けを思うと、だんだんろくろを出すのが億劫になってしまう…。そんな本末転倒な事態を避けるためにも、ぜひ「ドベ受けは分割型か?」という点を、最重要チェック項目にしてください。

意外と見落とす「静音性」 ご近所迷惑にならないために

先ほども少し触れましたが、「静音性」も非常に重要なポイントです。特に、夜間や早朝に作業することが多いだろうな、と予想される方は、しっかり確認しておきましょう。

 

電動ろくろの音の原因は、主に「モーター音」と「振動音」です。最近の家庭用モデルは、かなり静音性に配慮した設計になっています。特に「ダイレクトドライブモーター」や「ブラシレスモーター」といった方式を採用しているモデルは、従来のベルト駆動式のものに比べて、格段に静かだと言われています。カタログのスペック表にモーターの種類が書いてあったら、ぜひチェックしてみてください。

 

ただ、カタログ上の「〇〇デシベル」という数値だけでは、実際の聞こえ方はなかなかわかりません。可能であれば、陶芸用品を扱っているお店などで、実機の音を聞かせてもらうのが一番です。それが難しい場合は、YouTubeなどで、その機種を使っている人のレビュー動画を探してみるのも一つの手。実際に回している時の音を聞くことができるので、かなり参考になりますよ。

 

また、音だけでなく「振動」も忘れてはいけません。フローリングの床に直接置くと、振動が階下に響いてしまう可能性があります。防振ゴムや厚手のマットなどを敷くことで、かなり軽減できますが、それでもゼロにはなりません。この「音」と「振動」の問題をクリアできるかどうかは、あなたの住環境と、ご近所さんとの関係性にもよります(笑)。「これくらいなら大丈夫だろう」という甘い見通しは禁物。長く、心穏やかに陶芸を楽しむためにも、慎重に検討したいポイントです。

メーカーごとの特徴ってあるの?シンポとグット電機を比べてみた

さて、具体的にどのメーカーを選べばいいの?という話になりますよね。日本で家庭用電動ろくろといえば、もう二大巨頭と言っていいのが「NIDECH-SHIMPO(日本電産シンポ)」と「グット電機」です。車で言えば、トヨタとスズキみたいな感じでしょうか。どっちも良いメーカーだけど、得意分野やキャラクターがちょっと違うんです。

 

まず「シンポ」。こちらは、言わずと知れた陶芸機器のトップメーカー。プロの陶芸家が使っているのも、ほとんどがシンポ製です。その家庭用モデルなので、「品質」「パワー」「耐久性」に関しては、もう絶対的な信頼感があります。「いつかはプロのように…」という憧れがあるなら、シンポを選んでおけば間違いありません。まさに王道、安心と信頼のブランドです。価格は少し高めですが、それに見合う価値は十分にあります。代表的なモデルに「RK-5T」や「RK-55」などがありますね。

 

一方の「グット電機」。こちらは、「手軽さ」「コンパクトさ」を追求したモデルが人気です。代表的な「らくらく2型」などは、シンポのモデルに比べて一回り小さく、価格も比較的リーズナブル。「本格的というよりは、まずは趣味として気軽に楽しみたい」という方にぴったりです。パワーはシンポに比べると少し控えめですが、先ほども言った通り、家庭で楽しむ分には全く問題ありません。とにかく省スペースで、手軽に始めたいというニーズに、見事に応えてくれるメーカーです。

 

どっちを選ぶかは、あなたの陶芸に対するスタンス次第。「どうせ買うなら、一生モノの本格的なやつを!」という方はシンポ。「まずは場所を取らず、気軽に始められるのが一番!」という方はグット電機、という感じでしょうか。どちらのメーカーも、長年多くの陶芸ファンに愛されてきた実績がありますから、最終的にはデザインの好みなどで決めてしまっても、大きな失敗はないと思いますよ。

電動ろくろを手に入れた後の世界【妄想と現実】

 

ついに、夢にまで見た「マイろくろ」を手に入れた!さあ、これで毎日がパラダイスだ!…と、思いますよね。私もそう思っていました。でも、実際にろくろのある生活を始めてみると、そこには想像していたキラキラした世界だけでなく、ちょっぴり(いや、かなり?)現実的な日常が待っていました。ここでは、購入後のリアルな世界を、少しだけ覗いてみましょう。

 「いつでも好きな時に作れる!」は本当? 私のリアルな制作スケジュール

「マイろくろさえあれば、仕事から帰ってきて、寝る前にちょっと一杯…ならぬ、ちょっと一こね。休日も朝から晩まで、心ゆくまで作陶三昧!」…これが、私の抱いていた壮大な妄想でした。

 

で、現実はどうだったか。平日は、もう、無理です(笑)。仕事でクタクタに疲れて帰ってきて、そこから床にシートを敷いて、粘土を準備して、ろくろを回して、そしてあの面倒な片付けをする…という気力が、どうしても湧いてこないんです。結局、平日にろくろの電源を入れることは、ほとんどありませんでした。

 

そうなると、作陶は必然的に週末に集中します。土曜の午前中に買い物を済ませ、午後から「よし、やるぞ!」と気合を入れてスタート。夢中になって作っていると、あっという間に夕方に。そこから地獄の片付けタイムが始まります。なんだかんだで、夜までかかってしまうことも。日曜も同じように過ごすと、あっという間に週末が終わってしまう。「あれ、私、週末ずっと粘土こねてただけじゃん…」と、月曜の朝に少しだけ虚しくなったりならなかったり。

 

「いつでも好きな時に作れる」というのは、時間的にも体力的にも、そして精神的にも余裕がある、という条件付きの真実だったのです。もちろん、この没頭できる時間があるからこそ、最高のストレス解消になるんですけどね!

作品が増える喜びと、置き場所に困る悲しみ

電動ろくろがあると、本当に、どんどん作品が生まれます。最初は歪んだ湯呑みばかりだったのが、だんだんとお茶碗になり、小鉢になり、ちょっとしたお皿も作れるようになってくる。この上達していく過程が、本当に楽しくて仕方ないんです。成功した作品はもちろん、ちょっと失敗しちゃったけど愛着のある作品も、全部が可愛くて仕方ない。

 

…で、ですよ。その作品たち、どこに置きますか?

 

そう、これが「作品渋滞問題」です。作ったばかりの作品は、乾燥させるためのスペースが必要です。風通しの良い、直射日光の当たらない場所。乾燥棚なんて立派なものはありませんから、本棚の一角や、テーブルの隅っこが、だんだんと素焼き前の作品たちに占領されていきます。

 

そして、無事に焼き上がってきた完成品たち。最初は食器棚に嬉々として並べるんですが、すぐに満員御礼。それでも作品は増え続けます。「このお皿、すごく良くできたけど、うちの食器棚のテイストと全然合わないな…」「この壺、何に使えばいいんだ…?」なんて、嬉しい悲鳴を上げることになります。家族からは「また増えたの…?」と、冷たい視線を浴びることも。

 

自分で作った器でご飯を食べる喜びは、何にも代えがたいものがあります。でもその裏側で、増え続ける作品たちの収納場所に、常に頭を悩ませることになる。これもまた、ろくろオーナーのリアルな日常なのです。

焼成はどうする?窯元探しという新たなミッション

さあ、作品ができました。乾燥も完璧です。次なるミッションは、これを焼いてくれる場所、「窯元」を探すことです。電動ろくろを手に入れることばかり考えていて、この「焼成問題」を意外と見落としている人、多いんじゃないでしょうか。

 

「持ち込み焼成OK」の窯元や陶芸工房は、ネットで検索すれば意外と見つかります。でも、問題はそこから。料金体系は?素焼きだけでもOK?釉薬は自分でかけるの?それともお任せできるの?完成までの期間は?などなど、確認すべきことがたくさんあります。

 

近所に見つかればラッキーですが、場合によっては車で1時間以上かかる場所に、壊れやすい作品を慎重に運んでいかなければなりません。これがまた、結構なプレッシャーなんですよ。無事に窯元に預けて、焼き上がりを待つ数週間は、期待と不安でドキドキ。そして、窯から出てきた我が子(作品)と再会する瞬間は、本当に感動的です。

 

でも、時には悲劇も起こります。窯の中で割れてしまったり、思ったのと全然違う色に焼き上がってしまったり…。これも陶芸の醍醐味、と言ってしまえばそれまでですが、結構へこみます(笑)。この窯元探しと、窯元さんとのお付き合いも、自宅陶芸の重要な一部。ろくろを買う前に、「自分の作品を焼いてくれる場所」の目星を、いくつか付けておくと安心ですよ。

まとめ 最高の陶芸ライフを送るための最初のステップ

 

ここまで、私の暑苦しいくらいの体験談と持論にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。電動ろくろの選び方、というテーマでしたが、いかがでしたでしょうか。

 

この記事を通して私が一番伝えたかったのは、「焦らないで、まずは自分に合った形で陶芸に触れてみよう」ということです。憧れの「マイろくろ」は、確かに魅力的です。でも、勢いで購入して「こんなはずじゃなかった…」と後悔し、陶芸そのものが嫌いになってしまったら、それほど悲しいことはありません。

 

まずは陶芸教室で、プロの指導のもと、作ることの純粋な楽しさを味わってみる。あるいは、レンタルサービスを利用して、自宅でろくろと向き合う生活をリアルにシミュレーションしてみる。そうやって、「自分と陶芸との距離感」をじっくりと見極める時間こそが、失敗しないための、そして最高の陶芸ライフを送るための、何より大切な最初のステップなんです。

 

その上で、「やっぱり私にはマイろくろが必要だ!」と心から思えたなら、その時が最高の買い時です。この記事で紹介したチェックポイントを参考に、ぜひあなただけの一台を見つけてください。

 

土に触れていると、不思議と心が落ち着きます。自分の手の中から、少しずつ形が生まれてくる感覚は、他では味わえない特別な喜びです。電動ろくろは、そんな素晴らしい世界への扉を開けてくれる、最高のパートナーになり得ます。この記事が、あなたのその扉を開ける、ささやかな後押しになれば、これほど嬉しいことはありません。さあ、まずは粘土に触れてみませんか?きっと、あなたもその魅力の虜になりますよ。