陶芸で作品が割れるのは、あなたのせいじゃない!悲劇を繰り返さないための全知識

「やった!やっと完成した…!」そう思って、乾燥させて、ドキドキしながら窯詰して、数日後。窯の扉を開けた先にあったのは、無惨にも割れてしまったあなたの作品…。あの絶望感、言葉になりませんよね。ええ、わかります。私も、何度経験したことか。心がポッキリ折れる音が、作品が割れる音より大きく聞こえたりして。

 

でもね、もうそんな悲しい思いはしなくて大丈夫!実は、陶芸で作品が割れるのには、ちゃんと科学的な理由があるんです。それはあなたの才能がないからとか、センスが悪いからとか、そういう精神論では決してありません。原因のほとんどは「粘土の性質」をちょっとだけ理解していなかった、ただそれだけ。

 

この記事では、なぜあなたの愛しい作品が割れてしまうのか、その原因を「乾燥」と「焼成」の2つのステップに分けて、これでもか!というくらい徹底的に解説します。そして、どうすればその悲劇を防げるのか、具体的な対策も私の失敗談を交えながら(笑)、余すことなくお伝えします。この記事を読み終える頃には、「なるほど、そういうことだったのか!」と目から鱗が落ちて、次の作品作りが楽しみで仕方なくなっているはず。もう割れることを恐れずに、心から陶芸を楽しめるようになりますよ。さあ、一緒に失敗を乗り越えて、最高の作品を生み出しましょう!

陶芸で作品が割れるのは「乾燥」と「焼成」のせい

 

いきなりですが、この記事の核心からお伝えします。あなたが丹精込めて作った陶芸作品が割れてしまう原因は、もうハッキリしていて、その9割以上が「乾燥のさせ方」と「焼成(窯で焼くこと)」の過程に隠されています。本当に、ほぼこれです。だから、自分を責めるのは今日で終わりにしましょう。あなたは悪くない。ただ、土のキモチを少しだけ、わかってあげられていなかっただけなんです。

絶望の「パキッ」という音。あれは心が折れるよね

陶芸をやっていると、必ずどこかで耳にする音があります。それは「パキッ」とか「ピシッ」という、乾いた、そして絶望的な音。制作の途中だったり、乾燥棚に置いておいた作品から聞こえてきたり…。見に行くと、そこには無情なヒビが一本。ああ、神様、ひどい…。

 

私も陶芸を始めたての頃、初めて作った自分用のご飯茶碗を、そーっと棚に置いて、毎日「順調に乾いてるかな?」なんて、我が子のように眺めていたんです。ある朝、工房に行くと、見事に口元から高台(底の部分ね)まで、一直線に亀裂が入っていました。もうね、ショックで言葉も出なかった。なんならちょっと泣いた(笑)。あの時の「なんでだよ!」っていう理不尽な怒りと悲しみは、今でも鮮明に思い出せます。

 

この「割れる」という現象は、陶芸を続ける上で避けては通れない、いわば洗礼のようなもの。でも、大丈夫。誰もが通る道なんです。プロの作家さんだって、今でもたまに割ります。大切なのは、割れた時に「もうやーめた!」って投げ出すんじゃなくて、「なんで割れたんだろう?」って、その原因を考えること。そこから、あなたの陶芸ライフはもっともっと面白くなっていきますから。

でも大丈夫!割れる原因はちゃんと科学的な理由があるんです

絶望的な「割れ」ですが、これは決してオカルト現象でも、あなたの運が悪いからでもありません。そこには必ず、物理的・科学的な原因が存在します。粘土っていうのは、水分を含んで柔らかい状態から、乾燥して水分が抜け、さらに焼成で高温にさらされることで、劇的にその姿を変えていく物質です。この変化の過程で、粘土の内部にはものすごいストレスがかかっているんですよ。

 

人間だって、急に環境が変わったり、無理やり何かをさせられたりしたらストレスで参っちゃうじゃないですか。粘土も同じ。彼ら(彼女ら?)の気持ちを無視して、「早く乾けー!」とか「もっと薄くなれー!」とか、こっちの都合ばかり押し付けていると、「もう無理です…パキッ」ってなっちゃうわけです。

 

この記事では、その粘土にかかる「ストレス」の正体を一つひとつ解き明かしていきます。「厚みが均一じゃないと、どうしてダメなのか」「どうして急に乾かしちゃいけないのか」「窯の中で何が起きているのか」。これらのメカニズムがわかれば、対策は自ずと見えてきます。原因がわかれば、もう怖くない。むしろ、「よしよし、お前の気持ちはわかってるぞ」って、土と対話しながら作れるようになる。そうなったら、もう最強だよね!

最初の関門「乾燥」で割れる!よくある3つの悲劇とその対策

 

陶芸の工程で、最初に訪れる最大の難関。それが「乾燥」です。成形が終わったばかりの作品は、いわば赤子同然。水分をたっぷり含んで、とてもデリケートな状態です。この子をいかに優しく、ストレスなく大人の状態(完全乾燥)まで導いてあげられるか。ここで作品の運命の8割が決まると言っても過言ではありません。本当に、ここが勝負どころなんです。

原因1「厚みのムラ」が粘土に無理をさせる

まず、乾燥段階で割れる原因の王様、それが「厚みのムラ」です。これ、本当に多い。例えば、お皿を作ったとします。中心部分は5mmの厚さなのに、縁だけ3mmみたいに薄くなっていたり、逆に底だけ妙に分厚かったり。こういう状態、心当たりありませんか?

 

粘土は乾燥すると、含まれていた水分が抜けることで収縮します。体積が小さくなるんですね。で、ここがポイントなんですが、薄い部分は早く乾いて早く縮む。厚い部分はゆっくり乾いてゆっくり縮む。この「縮むスピードの違い」が、粘土の内部に強烈な引っ張り合いを生じさせるんです。綱引きみたいなものですね。薄い部分が「早く縮みたいよー!」って引っ張って、厚い部分が「いや、まだ待ってくれー!」って抵抗する。この引っ張り合いに粘土が耐えきれなくなった時、「パキッ」と悲しい音が鳴り響くわけです。

 

特に、底の部分。ここは見えないからってついつい厚くなりがち。でも、器の側面は薄い。この厚みの差が、乾燥時に致命的な割れを引き起こすんです。「え、でも均一になんてできないよ!」って思いますよね。わかります。でも、これが割れの一番の原因なんだってことだけでも、まずは頭に入れておいてください。

対策1 均一な厚みを目指す!「タタラ作り」のススメ

じゃあ、どうすれば厚みを均一にできるのか。電動ろくろは熟練の技が必要だし、手びねりだとどうしてもムラが出やすい…。そんな初心者の方に、私が心からオススメしたいのが「タタラ作り」という技法です。

 

タタラ作りって、聞いたことありますか?簡単に言うと、粘土を麺棒とかで板状にスライスする作り方です。粘土の両脇に、同じ厚みの板(タタラ板って言います)を置いて、その板に沿って麺棒を転がせば、誰でも簡単に、均一な厚さの粘土の板が作れちゃうんですよ。これ、画期的じゃないですか?

 

この板状の粘土(これをタタラって呼びます)を使えば、お皿も、筒状にしてコップも、箱だって作れます。最初から厚みが揃っているから、乾燥時の収縮率が安定して、割れるリスクを劇的に下げることができるんです。まずはこのタタラ作りで、「均一な厚みってこういうことか!」という感覚を掴むのが、上達への一番の近道だと私は思います。陶芸教室の先生に「タタラ作りをやってみたいです!」って言ってみてください。きっと喜んで教えてくれますよ。手びねりやろくろで作る時も、指先の感覚を研ぎ澄ませて、「こっちは厚いな」「こっちは薄いな」って、常に厚みを意識する癖をつけることが大切です。

原因2「急激な乾燥」は粘土の悲鳴

次に多いのが、この「急激な乾燥」。早く完成させたい気持ち、よーくわかります。作ったものを早く使いたいもんね。だからって、風通しの良い場所や、直射日光が当たる場所にポンと置いてしまう…。これは、絶対にダメ!粘土からしたら、拷問に近い行為です。

 

さっき、粘土は乾燥すると縮むって話をしましたよね。急激に乾かすとどうなるか。表面だけがものすごいスピードで乾いて、ギュウウッと縮もうとします。でも、内部はまだ水分がたっぷりで、元の大きさを保とうとしている。外側は縮みたい、内側は縮みたくない。このせめぎ合いの結果、表面に「ちりめんじわ」のような細かいヒビ(これを「貫入」とは違う意味で「ひび」って言います)が入ったり、最悪の場合は大きな亀裂に発展したりします。

 

例えるなら、お餅を焼く時みたいな感じかな。強火で一気に焼くと、表面だけ焦げて硬くなるけど、中はまだ生のままですよね。あれと同じことが粘土にも起きているんです。粘土は生き物だと思って、丁寧に、ゆっくり時間をかけて乾燥させてあげることが、本当に重要なんです。「焦りは禁物」これは陶芸の鉄則ですよ。

対策2 ビニールで優しく包んで、ゆっくり、じっくり

じゃあ、どうやってゆっくり乾かすの?って話ですが、答えはシンプル。「ビニール袋」を使いましょう。スーパーの袋とか、ゴミ袋で大丈夫です。

 

成形が終わった作品を、まずはビニール袋ですっぽり覆ってあげます。こうすることで、袋の中の湿度が保たれて、水分の蒸発がゆるやかになるんです。いきなり空気に晒すのではなく、ワンクッション置くイメージですね。最初の1〜2日は、袋を完全に閉じて、作品全体の水分量を均一にならしてあげます。その後、少しずつ袋の口を開けて、外の空気に触れさせていく。

 

作品の大きさや季節(特に冬は乾燥しやすいので注意!)にもよりますが、数日から1週間くらいかけて、じっくりじっくり乾燥を進めていきます。指で触ってみて、ひんやりしなくなったら、ビニールから出してOKのサイン。そこからさらに数日間、風通しの悪い、日陰で本乾燥させます。この「じっくり乾燥」をマスターするだけで、あなたの作品が割れる確率は半分以下になるはず。面倒くさがらずに、ぜひ試してみてください。このひと手間が、未来の悲劇を防ぎます。

原因3「パーツの接着不良」は後から泣きを見る

取っ手付きのマグカップとか、注ぎ口のある急須とか、パーツを後からくっつける作品って可愛いですよね。でも、この「接着」が、実はかなりの落とし穴なんです。ちゃんとくっついているように見えても、乾燥や焼成の過程でポロリ…なんてことは日常茶飯事。

 

これも原因は「収縮率の違い」です。本体と取っ手、それぞれの粘土の乾き具合(硬さ)が違う状態でくっつけてしまうと、乾燥が進むにつれて収縮する度合いに差が出て、接着面が引っ張られて剥がれたり、ヒビが入ったりするんです。例えば、まだ柔らかい本体に、ちょっと乾き始めた硬い取っ手をくっつけたとしましょう。柔らかい本体はこれから大きく縮むけど、硬い取っ手はもうあまり縮まない。このズレが、割れの原因になるんです。

 

「よし、くっついた!」って思ったのに、乾燥棚を見たら取っ手が無残に転がってた時のあの悲しさ…。接着は、陶芸の中でも特に神経を使う作業のひとつ。ここを制する者は、作れる作品の幅がぐんと広がりますよ。

対策3 ドベは接着剤じゃない!傷をつけてしっかり繋ぐ

パーツを接着する時、多くの人が「ドベ」を使いますよね。ドベっていうのは、粘土を水で溶いた、泥状のものです。これを接着剤みたいに塗って、パーツをくっつける。でも、ここに大きな誤解があるんです。ドベは、接着剤ではありません!あれはあくまで、粘土同士の隙間を埋めるための「充填剤」であり、「潤滑剤」なんです。

 

じゃあどうやってくっつけるのか。正解は、「傷をつけて、一体化させる」です。本体とパーツ、それぞれの接着面に、クシやフォーク、針なんかで、これでもか!っていうくらい格子状に傷をつけます(これを「カキベラでかく」とか言ったりします)。傷は深いほど良い。お互いの傷に、お互いの粘土が食い込むようにするんです。

 

そして、傷をつけた両面にドベを塗って、グッと力を込めて押し付ける。この時、少しグリグリとねじるように押し付けると、傷同士ががっちり噛み合ってくれます。最後にはみ出たドベを綺麗に拭き取ればOK。ポイントは、接着する本体とパーツの粘土の硬さを、できるだけ同じくらいにしておくこと。そして、ドベを信じすぎないこと(笑)。傷と傷とを、物理的に噛み合わせる。この意識が、取れない取っ手を作るコツです。

魔の窯焚き!焼成で作品が爆発・ひび割れる恐怖の原因

 

無事に乾燥という第一関門を突破したあなたの作品。しかし、安心するのはまだ早い。次なる試練、ラスボスとも言える「焼成(しょうせい)」、つまり窯焚きが待ち構えています。窯の中は1200℃以上にもなる灼熱地獄。ここで作品に潜んでいた小さな欠陥が、爆発や亀裂という最悪の形で牙を剥くことがあるんです。窯出しの日に、自分の作品が粉々になっていたら…想像するだけで恐ろしいですよね。

原因1 粘土の中に潜む「空気」という名の爆弾

焼成で作品が割れる、というか「爆発する」原因のナンバーワン。それは、粘土の中に残ってしまった「空気」です。粘土をこねている時や、成形している時に、粘土の中に小さな空気の泡が閉じ込められてしまうことがあるんです。

 

この空気が、窯の中でどうなるか。ご存知の通り、空気は温められると膨張しますよね。窯の中は1200℃以上の超高温。閉じ込められた空気は「うおー!熱い!外に出せー!」とばかりに、ものすごい力で膨張し、内側から粘土を押し広げようとします。その圧力に粘土が耐えきれなくなった瞬間…ドカン!です。

 

そう、作品が爆発するんです。自分の作品が爆発するだけならまだしも(いや、それも悲しいけど)、その破片が周りにある他の人の大切な作品に当たって、道連れにしてしまうことも…。これはもう、テロ行為と言っても過言ではありません。陶芸教室では、最も恐れられている悲劇のひとつです。だからこそ、成形前の土殺し、つまり「菊練り」がめちゃくちゃ重要になってくるわけです。

対策1 菊練りは伊達じゃない!空気を抜くための儀式

「菊練り」、陶芸をやったことがある人なら、一度は聞いたことがあるはず。粘土の塊を、菊の花びらのような形に、リズミカルに練り込んでいく、あの作業です。あれ、ただの準備運動だと思ってませんか?「なんかプロっぽくてカッコいいけど、面倒くさいな…」なんて思ってませんか?甘い!

 

菊練りは、粘土の硬さを均一にするという目的もありますが、最大の目的は「粘土の中から空気を追い出すこと」なんです。あの独特の、練り込みながら回転させる動きは、粘土の内部にある空気を中心に集め、そして外へと排出するための、非常によくできた合理的な技術なんですよ。

 

正直、菊練りは難しいです。私も最初は全然できなくて、ただ粘土をいじめてるだけみたいになってました(笑)。でも、ここで手を抜くと、後で必ず痛い目を見ます。もし自分でやるのが難しければ、今は「土練機(どれんき)」という、粘土を練ってくれる便利な機械を置いている教室も多いです。真空で空気を抜いてくれるタイプなら最強ですね。とにかく、これから作る作品の粘土には、絶対に空気が残っていない状態にする。これは、自分と、そして周りの人の作品を守るための、最低限のマナーであり、愛情なんです。

原因2「水分の残り」が高温で大暴れする

もうひとつの窯での爆発原因、それが「水分の残り」、つまり「乾燥不足」です。見た目は完全に乾いているように見えても、粘土の芯の部分に、まだ水分が残っていることがあります。特に、分厚く作ってしまった作品の底なんかは要注意。

 

この残った水分が、窯の中でどうなるか。温度が100℃を超えると、水は水蒸気になりますよね。そして、液体だった水が気体である水蒸気になると、体積がなんと約1700倍にも膨れ上がるんです!1700倍ですよ!?想像できますか?粘土の中に閉じ込められた水分が、一気に1700倍に膨張しようとする。そのエネルギーは、まさに爆弾。空気が原因の爆発よりも、もっとパワフルに、木っ端微塵に作品を吹き飛ばします。

 

これもまた、周りの作品を巻き込む大惨事を引き起こしかねません。「まあ、だいたい乾いてるっしょ!」という軽い気持ちが、取り返しのつかない悲劇を生むんです。怖がらせるようですけど、これは本当に起こることなので、肝に銘じておいてください。

対策2 焦らないで!「完全乾燥」こそが正義

対策は、もうお分かりですよね。そうです、「完全に、完璧に、100%乾燥させること」。これに尽きます。じゃあ、完全乾燥ってどうやって見分けるの?っていうのが問題ですよね。

 

一番簡単な方法は、作品を頬に当ててみることです。もし、ひんやりとした冷たさを感じたら、それはまだ水分が残っている証拠。気化熱ってやつですね、水分が蒸発する時に熱を奪うから冷たく感じるんです。常温で、まったくひんやりしなくなったら、乾燥完了のひとつの目安です。

 

あとは、念には念を入れて、窯に入れる前に低温でじっくり再乾燥させるという方法もあります。ホットボックスと呼ばれる乾燥庫に入れたり、ストーブの近くに置いて(火事には注意!)最後の水分を飛ばしたり。陶芸教室では、窯焚きのスケジュールの都合もあると思いますが、もし自分の作品が少しでも怪しいと思ったら、勇気を持って先生に「これ、もう少し乾燥させてもいいですか?」と相談してみてください。焦って窯に入れて後悔するより、その方が絶対に良いですから。

ちょっと脱線「素焼きで割れたらまだマシ」って話

ここでちょっとだけ脱線の話を。陶芸の焼成には、大きく分けて「素焼き(すやき)」と「本焼き(ほんやき)」の2ステップがあります。素焼きは800℃くらいの比較的低い温度で焼いて、粘土を丈夫にする工程。本焼きは、釉薬(ゆうやく)をかけてから1200℃以上で焼いて、ガラス質でコーティングして完成させる工程です。

 

で、ですよ。もし、あなたの作品が割れる運命にあるとしたら、神様にお願いしてでも「素焼き」の段階で割れてもらうべきなんです。なぜか。本焼きで割れると、溶けた釉薬が窯の棚板(作品を乗せる板)にベットリとくっついて、棚板をダメにしてしまうことがあるんです。この棚板、結構いいお値段するんですよ…。自分の作品が割れる悲しさに加えて、弁償問題にまで発展したら、目も当てられないじゃないですか。

 

素焼きで割れた場合は、まあ、破片を片付ければ済みます(悲しいけど)。だから、もし素焼きの窯出しで自分の作品が割れていたら、「ああ、本焼きじゃなくてよかった…!被害が最小限で済んだ!」と、無理やりにでも思うようにしてください(笑)。これも一種の心の持ちよう、リスク管理ってやつですね。

それでも作品は割れるもの。プロだって失敗するんだから

 

ここまで、割れないためのテクニックを色々とお伝えしてきました。でもね、最後にこれだけは言わせてください。どんなに気をつけても、どんなに丁寧に作っても、作品は割れる時は割れます。それはもう、仕方のないことなんです。百戦錬磨のプロの陶芸家だって、年に何回かは必ず失敗作を出します。窯の中は、人間の力が及ばない、神様の領域みたいなところもあるのかもしれません。

割れた作品は「勉強代」。そこから何を学ぶか

割れてしまった作品の破片を前にして、落ち込むなという方が無理な話。でも、その破片は、ただのゴミじゃありません。それは、あなたの次へのステップに繋がる、最高の「教科書」なんです。

 

その破片をじーっと観察してみてください。どこから割れてる?割れた断面の厚みはどうなってる?やっぱり底が厚かったかな?接着面がちゃんとくっついてなかったかな?空気の泡みたいな穴は空いてない?その破片は、なぜ自分が割れなければならなかったのかを、雄弁に語ってくれます。

 

「ああ、やっぱりここの厚みが均一じゃなかったんだ」「接着する時の傷つけが甘かったんだな」。その「気づき」こそが、何物にも代えがたい財産になります。成功した作品からは、なぜ成功したのかなんて、なかなかわからないもの。失敗した作品こそが、あなたを成長させてくれる最高の先生なんです。「授業料、払ったぜ!」くらいの気持ちで、割れた原因をしっかり分析して、次の作品作りに活かしましょう。そうやって、みんな上手くなっていくんですから。

「金継ぎ」という新しい命を吹き込む選択肢

どうしても諦めきれない、思い入れのある作品が割れてしまった…。そんな時は、「金継ぎ(きんつぎ)」という修復技法に挑戦してみるのも、ひとつの素敵な選択肢です。

 

金継ぎは、割れたり欠けたりした陶磁器を、漆(うるし)を使って接着し、その継ぎ目を金や銀で装飾して仕上げる、日本独自の修復技術。ただ元通りに直すんじゃなくて、その傷跡を「景色」として愛で、新たな価値を生み出すという、めちゃくちゃ美しい考え方だと思いませんか?

 

割れてしまった悲しい記憶が、世界にひとつだけの美しいデザインに生まれ変わる。失敗を、むしろ個性として受け入れる。これって、なんだかすごく、陶芸の本質や、もっと言えば人生にも通じるような気がしませんか。最近は初心者向けの金継ぎキットなんかも売っていますし、ワークショップも各地で開かれています。割れた器を、もっともっと特別な存在にしてあげる。そんな愛情のかけ方もあるんだってことを、頭の片隅に置いておいてください。

完璧を目指さない。それも陶芸の「味」になる

陶芸をやっていると、ついつい完璧を求めてしまいがちです。歪みのない、まっすぐな形。ムラのない、均一な厚み。もちろん、それを目指して技術を磨くことはとても大切。でも、忘れないでほしいんです。手作りの良さって、その「不完全さ」にあるんじゃないかなって。

 

少し歪んでいたり、指の跡が残っていたり、釉薬のかかり方が思った通りじゃなかったり。そういう、機械では絶対に出せない「揺らぎ」こそが、その器を世界でたったひとつの、愛おしい存在にしてくれるんだと私は思います。

 

割れることを恐れすぎるあまり、作るのが怖くなってしまったら本末転倒。そんなの、ちっとも楽しくないじゃないですか。少しくらい失敗したっていい。完璧じゃなくたっていい。「まあ、これも味ってことで!」って笑い飛ばせるくらいの、心の余裕を持つこと。それもまた、陶芸を楽しむための大事なコツのひとつ。肩の力を抜いて、土との対話を楽しみましょうよ。

まとめ 失敗を恐れず、土と対話する楽しさを見つけよう

 

さて、ここまで「陶芸で作品が割れる」という、ちょっとネガティブなテーマについて、熱く語ってきました。もう一度大事なことを言うと、作品が割れるのは、あなたの才能の問題ではなく、ほとんどが「乾燥」と「焼成」の過程で起こる物理的な現象が原因です。厚みのムラ、急激な乾燥、接着不良、粘土の中の空気や水分…。これらの原因と対策がわかっていれば、悲劇はかなりの確率で防ぐことができます。

 

でも、この記事で私が一番伝えたかったのは、テクニック以上に「失敗との向き合い方」かもしれません。陶芸は、思い通りにいかないことの連続です。粘土は生き物みたいで、こっちの言うことを聞いてくれない時もある。窯の中では、人間の力の及ばない何かが作用することだってある。だから、割れる時は割れるんです。

 

大切なのは、その失敗を恐れて手が止まってしまうことではなく、割れた破片から何かを学び取り、「次はこうしてみよう!」と前に進むこと。そして、完璧じゃない自分の作品を「これも味だよね」と愛してあげること。その繰り返しの中にこそ、陶芸の本当の楽しさや奥深さが隠れているんだと、私は信じています。失敗は、成功へのただの通り道。さあ、恐れずに、また粘土を触りに行きましょう。あなたの次の作品が、今度は無事に焼き上がることを、心から願っています!