陶芸作品はどれくらい縮む?失敗しないための収縮率の全知識

「よし、完璧なサイズのビアカップができたぞ!これで飲むビールは最高だろうな…」なんてウキウキしながら焼き上がりを待っていたら、なんだか一回り小さい、まるで子供用のコップみたいなのが出てきた…。

 

これ、陶芸を始めた人が一度は経験する「あるある」じゃないでしょうか?私も見事にやらかしました。あの時のガッカリ感、今でも鮮明に思い出せます(笑)。

 

実は、陶芸で作った作品は、乾燥させて窯で焼く過程で必ず「縮み」ます。しかも、これが想像以上に縮むんですよ!結論から言ってしまうと、粘土の種類にもよりますが、大体10%〜20%も小さくなります。

 

「え、20%!?そんなに!?」って思いますよね。そうなんです。15cmのお皿を作ったつもりが、焼き上がったら12cmくらいになっちゃう計算です。この「収縮率」を知らないと、せっかく心を込めて作った作品が、まったく意図しないサイズや形になってしまう悲劇が起こります。

 

でも、安心してください!この「縮む」という現象は、陶芸の面白さであり、奥深さの入り口でもあるんです。なぜ縮むのか、どれくらい縮むのかをちゃんと理解して、それを計算に入れて作れば、あなたの思い描いた通りの作品をバッチリ生み出すことができます。

 

この記事では、陶芸の「収縮」について、私の涙の失敗談も交えながら(笑)、どこよりも分かりやすく、そして熱く解説していきます!これを読めば、あなたも収縮を恐れるどころか、完全に味方につけて、陶芸の世界をもっともっと楽しめるようになるはずです。「縮み」の謎を解き明かしていきましょう!

陶芸の作品は乾燥と焼成で10〜20%も縮むんです

 

まず、一番大事なことからお話ししますね。陶芸作品は、粘土の状態から焼き上がるまでに、驚くほど縮みます。この事実を最初に頭に叩き込んでおくことが、理想の作品への第一歩なんです。なんとなく「少しは小さくなるんだろうな」くらいの認識だと、間違いなく後で衝撃を受けることになりますから!じゃあ具体的に、どれくらい、そしてなぜ縮むのかを見ていきましょう。

土の種類でこんなに違う!驚きの収縮率

「10%〜20%縮む」と一言で言っても、実は使う粘土の種類によってその縮み具合は全然違います。これがまた、陶芸の面白いところであり、悩ましいところでもあるんですよね。

 

例えば、比較的扱いやすいと言われる「信楽(しがらき)の土」だと、収縮率はおおよそ12%〜13%くらいです。10cmの作品を作ったら、8.7cmくらいになる計算ですね。一方で、透き通るような白さが美しい「磁器土(じきど)」になると、これがなんと15%〜20%にもなります。同じ10cmの作品が、8cmくらいまで小さくなっちゃう。え、2cmも違うの!?って感じですよね。

 

この数パーセントの違いが、完成形に大きな影響を与えます。特に、マグカップの取っ手と本体、急須の蓋と本体のように、複数のパーツを組み合わせるものを作る時は、この収縮率の計算がめちゃくちゃ重要になってきます。「まあ、だいたいでいっか」なんてやっていると、蓋が閉まらない、もしくはスカスカで全く意味がない、なんていう悲しい作品が爆誕してしまうわけです…。

 

陶芸教室で使う土や、購入する土には、大抵この収縮率が書いてあります。まずはその数字をしっかり確認すること。「この土は、だいたい13%縮むのね、フムフム…」と、作る前にインプットしておく。この一手間が、あなたの作品のクオリティをぐっと引き上げてくれるんですよ。

なぜ粘土は縮むのか?科学的なハナシをざっくりと

じゃあ、そもそもなんで粘土は縮むんでしょうか?ここを理解しておくと、ただ「縮むから大きく作ろう」という思考から一歩進んで、「どうすれば綺麗に縮ませられるか」を考えられるようになります。ちょっとだけ科学的な話になりますが、めちゃくちゃ簡単に説明するので安心してください!

 

粘土って、ものすごく小さな土の粒々が集まってできています。そして、その粒と粒の間を「水」がびっしりと埋めている状態なんです。ちょうど、水をたっぷり含んだスポンジみたいなイメージですね。私たちが手でこねたり、ろくろを回したりできるのは、この水のおかげで粘土が柔らかいからです。

 

作品の形ができあがって、それを乾燥させていくと、どうなるか?当然、粒と粒の間にあった水分がどんどん蒸発していきますよね。水分がなくなると、今まで水で満たされていた隙間がなくなって、土の粒子同士が「ギュッ」とくっつき合います。この時に、まず1回目の収縮が起こるんです。これを「乾燥収縮」と言います。

 

そして、完全に乾いた作品を窯に入れて焼く「本焼き」。ここでもう一段階、さらに縮みます。今度は1000℃を超えるような高温で、粘土の粒子そのものが溶け始め、粒子同士が焼き固まって一体化していきます。これを「焼成収縮(しょうせいしゅうしゅく)」とか「焼結(しょうけつ)」なんて言ったりします。粒子同士がさらに緻密に結びつくので、体積がグッと小さくなるわけです。

 

つまり、粘土が縮むのは「①水分が抜けるから」そして「②高温で焼き締まるから」。この2段階のプロセスで、トータル10%〜20%も縮む、というカラクリなんです。どうです?理由が分かると、なんだか縮むこと自体が神秘的に思えてきませんか?…え、そんなことない?(笑)

「まあ、いっか」が命取り!収縮率をナメてた私の大失敗

 

知識として「縮む」ことは分かっていても、それを甘く見ていると本当に痛い目を見ます。これは脅しじゃなくて、経験者は語る、ってやつです。ええ、何を隠そう、私自身が数々の失敗を重ねてきましたから…。ここでは、そんな私の涙ちょちょぎれる大失敗談を、皆さんの未来の成功の糧にしていただくために、恥を忍んでお話ししたいと思います。これを読めば、「収縮率、マジ大事…」って心に刻まれるはずです!

「あれ?なんか小さくない?」理想のビアカップがぐい呑みに…

あれは、陶芸を始めてまだ数ヶ月の、蒸し暑い夏のことでした。「今年の夏は、自分で作った最高のビアカップで、キンキンに冷えたビールを飲むんだ!」と意気込んで、ろくろに向かったんです。イメージは完璧。手にしっくり馴染む大きさ、泡がクリーミーになるように計算されたフォルム、唇当たりの良い飲み口…。うん、我ながら会心の出来!粘土の状態では、まさに理想のビアカップそのものでした。

 

乾燥させて、素焼きして、釉薬をかけて、いよいよ本焼きへ。「早く焼き上がらないかな〜」なんて、遠足前の小学生みたいにワクワクしながら待っていました。そして、ついに焼き上がりの日。窯から出てきた私のビアカップは…あれ?なんか…小さくない?

 

手に取ってみると、明らかに小さい。350ml缶のビールなんて絶対に入りきらない。というか、これ、どう見ても日本酒を飲む「ぐい呑み」サイズじゃん!って。あの時の衝撃と脱力感たるや…。夏の夜のビールの夢は、小さなぐい呑みと共に儚く消え去ったのでした。

 

原因は、もちろん収縮率の計算を完全に怠っていたこと。「まあ、多少は縮むだろうけど、大丈夫っしょ!」という根拠のない自信が、この悲劇を生んだのです。皆さんは、私と同じ過ちを繰り返さないでくださいね。ビールを飲みたいなら、作る時は「いや、これデカすぎだろ!」って思うくらいのサイズで作るのが正解なんです!

悲鳴!大皿のフチから無情に伸びる亀裂

収縮がもたらす悲劇は、サイズが小さくなるだけではありません。もっと恐ろしいのが、「歪み」や「亀裂」です。これも私、やらかしました。

 

ある時、ちょっと背伸びして、直径30cmくらいの大皿に挑戦したんです。パスタを乗せたり、メインディッシュをどーんと盛り付けたりするイメージで。形作りは上手くいって、あとは乾燥です。割れたら嫌だから、それはもう丁寧に、ゆっくりゆっくり乾燥させました。風通しの良い日陰で、ビニールをふんわりかけて、毎日様子を見て…。

 

「うん、完璧に乾いたな!」と確認して、いざ素焼きへ。そして窯から出てきたお皿を見て、私は言葉を失いました。お皿のフチから、中心に向かって、無慈悲な亀裂が「ピシッ」と入っていたんです。うわー!マジかー!あんなに大事に乾燥させたのに、なんで!?

 

先生に泣きついたら、一言。「底の厚みとフチの厚み、均一じゃなかったでしょ」。…図星でした。ろくろで作る時、どうしてもフチの方が薄く、中心部が厚くなりがちなんです。厚みが違うと、乾燥するスピードも、焼成で縮むスピードも変わってきます。薄いフチはさっさと縮もうとするのに、分厚い中心部はまだのんびりしている。この「縮みたい力」のズレが、素材に無理なストレスをかけて、結果的に亀裂を生んでしまうんです。

 

収縮は、作品全体で「せーの!」で均一に起こってくれないと、こういう悲劇につながるんですね。ただ大きく作るだけじゃなく、「均一な厚みで作る」こと、そして「均一に乾燥させる」ことが、いかに大事かを痛感した出来事でした。

蓋が閉まらない!いや、閉まるけど開かない!ミステリーな蓋物

パーツを組み合わせる「蓋物(ふたもの)」は、陶芸の面白さが詰まったテーマですが、同時に収縮率とのガチバトルが始まる領域でもあります。小物入れとか、シュガーポットとか、可愛いですよね。私も憧れて、挑戦してみたんです。

 

本体と蓋、それぞれを同じ土で作って、ぴったり合うように何度も何度もサイズを調整しました。「うん、これなら完璧!」と、粘土の段階では寸分の狂いもなくハマる蓋物が完成しました。

 

そして、運命の焼き上がり。さあ、感動のフィッティングタイムです!蓋を本体に乗せてみると…カタカタする。隙間が空いてるじゃん…。なんで?同じ土で作ったのに?

 

実は、同じ土でも、例えば本体と蓋で粘土の水分量が微妙に違ったり、それぞれの厚みが違ったりするだけで、収縮率に微妙な差が生まれてしまうことがあるんです。たった0.5%の差でも、完成時には数ミリのズレになって現れます。

 

もっと最悪なのは、その逆のパターン。「あれ?蓋が閉まらない…いや、閉まった!…けど、開かない!」という密室監禁状態になることです。これはもう、どうしようもありません(笑)。無理に開けようとすると、どっちかが割れる。泣く泣く、蓋は蓋、本体は本体で、別々の人生(?)を歩んでもらうことになります。蓋物は、このミリ単位の収縮を読み切る、まさに陶芸の総合力が試されるジャンル。だからこそ、上手くできた時の喜びは格別なんですけどね!

狙ったサイズを外さない!収縮率を味方につける計算術

 

さて、私の悲しい失敗談を聞いて、「うわ、陶芸って難しそう…」と怖気付いてしまった人もいるかもしれません。でも、大丈夫!ちゃんと対策を知っていれば、収縮はコントロールできるんです。ここでは、狙った通りのサイズに仕上げるための、具体的な計算方法や便利な道具についてお話しします。これをマスターすれば、あなたも「収縮率を制する者」になれるはず!

電卓片手にやってみよう!意外と簡単な計算式

「計算」と聞くと、なんだか難しそうに感じますよね。でも、安心してください。使うのは小学校で習うレベルの割り算だけです。陶芸の収縮率計算で使う、魔法の公式はこちら!

 

完成させたいサイズ ÷ (1 - 収縮率) = 成形する時のサイズ

 

これだけです!簡単でしょ?
例えば、「直径10cmのお皿」を、「収縮率12%の粘土」で作るとしましょう。
まず、収縮率の12%を小数に直します。12%は0.12ですね。
次に、これを「1」から引きます。1 - 0.12 = 0.88。
最後に、完成させたいサイズの「10cm」を、さっきの「0.88」で割ります。
10 ÷ 0.88 = 11.3636...
つまり、だいたい「11.4cm」の大きさで粘土の形を作れば、焼いた後にちゃんと10cmのお皿になる、というわけです。
もう一つ例をやってみましょうか。「高さ15cmの花瓶」を、「収縮率15%の磁器土」で作る場合。
収縮率15%は0.15。
1 - 0.15 = 0.85。
15 ÷ 0.85 = 17.647...
なので、だいたい「17.6cm」の高さで作ればOK、ということになります。

 

どうです?電卓さえあれば、誰でもできますよね。作品を作る前に、このひと手間をかけるだけで、完成時のガッカリ感が劇的に減ります。ぜひ、あなたのスマホの電卓アプリを起動して、作りたいもののサイズを計算してみてください!

最強の味方「縮尺定規(シュクシャクジョウギ)」という名の神器

「計算式は分かったけど、毎回電卓叩くの、正直ちょっと面倒くさいな…」と思った、そこのあなた!分かります、その気持ち(笑)。そんな面倒くさがりな現代人のために、とんでもなく便利な道具が存在するんです。その名も「縮尺定規」!

 

これは、あらかじめ粘土の収縮率が計算された、ちょっと特殊な定規です。例えば、「12%用」の縮尺定規には、「10cm」と書かれているメモリがあるんですが、実際の長さは11.2cmになっています。つまり、この定規で「10cm」を測って作れば、焼き上がった時に自動的に本当の10cmになる、という優れものなんです!天才か!

 

これさえあれば、さっきの面倒な計算は一切不要。作りたいもののサイズを、この定規で測ってそのまま作るだけ。陶芸用品店やネットで、いろんな収縮率に対応したものが売られています。「10%用」「12%用」「13%用」「15%用」など、自分がよく使う粘土の収縮率に合わせて何本か持っておくと、めちゃくちゃ作業が捗ります。

 

特に、蓋物や箱物など、正確な寸法が求められる作品を作るときには、もう手放せません。これを発明した人には、本当に感謝状を贈りたいくらいです。もしあなたが本気で陶芸をやっていきたいなら、粘土や道具と一緒に、この縮尺定規もぜひ手に入れてみてください。制作のストレスがぐっと減って、もっとクリエイティブな部分に集中できるようになりますよ!

結局は経験がモノを言う。自分だけのデータを蓄積せよ

さて、計算式や便利な定規の話をしましたが、最後にちょっとだけ現実的な話をさせてください。実は、陶芸の収縮率は、必ずしもカタログスペック通りになるとは限らないんです。これがまた、一筋縄ではいかないところ…。

 

例えば、同じ「信楽土 収縮率12%」と書かれた粘土でも、採掘された時期や場所(ロット)によって、微妙に成分が違ったりします。また、粘土をこねる時の硬さ(水分量)や、ろくろでどれだけ土を締めたか、焼く窯の種類や温度、窯の中の置く場所によっても、最終的な収縮率は微妙に変わってくるんです。

 

「えー、じゃあ計算しても意味ないじゃん!」って思いますよね。いやいや、そんなことはありません。計算はあくまで「基本のキ」。その上で、自分なりの「経験則」をプラスしていくことが重要なんです。

 

そのために、ぜひやってみてほしいのが「テストピース」を作ること。10cm×2cmくらいの板状の粘土に、成形時と乾燥後、本焼き後の長さを記録しておくんです。これを作る時に使う粘土、釉薬、焼く窯でやっておけば、「自分がこの環境でやると、この土はだいたい12.5%縮むな」といった、あなただけのオリジナルデータが手に入ります。

 

この地道なデータの蓄積こそが、ベテランの作家さんが持つ「勘」の正体だったりするんですよね。陶芸は、科学的な知識も大事だけど、最後はやっぱり経験がモノを言う世界。失敗も成功も、すべてがあなたの血となり肉となり、データとなります。だから、たくさん作って、たくさん失敗して(笑)、自分だけの収縮率データをどんどん蓄積していってください。そのノートが、いつかあなたの宝物になるはずです。

土選びで勝負は決まる?粘土ごとの収縮率と特徴

 

どんな作品を作りたいかによって、選ぶべき粘土は変わってきます。そして、その粘土選びの重要な判断基準の一つが、何を隠そう「収縮率」なんです。収縮率が高いか低いかで、作りやすさや作品の仕上がりが大きく変わってきますからね。ここでは、それぞれの特徴を理解して、あなたの目的に合った最高のパートナー(粘土)を見つけるためのヒントをお話しします!

初心者の駆け込み寺!収縮率が低くて扱いやすい土

もしあなたが陶芸を始めたばかりなら、私は声を大にして言いたい!「まずは収縮率の低い土から始めなさい!」と。これはもう、絶対です。

 

なぜなら、収縮率が低いということは、それだけ乾燥や焼成での変形リスクが少ないということ。つまり、失敗しにくいんです。せっかく陶芸を始めたのに、作るもの作るもの、割れたり歪んだりしたら、楽しくなくなっちゃいますよね。まずは「作る楽しさ」「完成させる喜び」を味わうことが何よりも大切。そのためには、扱いやすい土を選ぶのが一番の近道です。

 

代表的なのは、やっぱり「信楽(しがらき)の土」ですね。収縮率は12%前後。土の中に含まれる砂粒(石ハゼ)などが骨格の役割をしてくれて、形が崩れにくいのが特徴です。素朴で温かみのある風合いも人気ですよね。他にも、「並漉し(なみこし)粘土」なども、比較的収縮率が低く、ろくろでも手びねりでも扱いやすいので、陶芸教室でよく使われています。

 

こういう土は、ちょっとくらい厚みにムラがあっても、乾燥が少し雑でも(笑)、なんとか耐えてくれるタフさがあります。まさに、初心者の心強い味方。まずはこうした土で、形を作ることに慣れて、収縮の感覚を身体で覚えていく。それが上達への王道ルートだと、私は思いますよ!

繊細で気難しいお嬢様?収縮率が高い磁器土の魅力と難しさ

一方で、収縮率が高い土の代表格が「磁器土」です。収縮率は15%〜20%と、粘土の中でもトップクラス。これは、信楽土と違って、骨格になるような粗い粒子がほとんど含まれておらず、非常にきめ細かい粒子だけでできているからです。

 

粒子が細かい分、乾燥や焼成での縮み幅が大きくなるし、ちょっとした厚みの違いや乾燥のムラで、すぐに歪んだり亀裂が入ったりします。ろくろで挽くにもコシがなくて、ふにゃふにゃで扱いにくい。乾燥も、それはもうお姫様に仕える執事のように、細心の注意を払ってゆっくり進めないといけません。本当に、気難しくて手のかかるお嬢様みたいな土なんです。

 

「じゃあ、なんでそんな土を使うの?」って思いますよね。それは、この困難を乗り越えた先に、他の土では決して味わえない、圧倒的な魅力があるからです。焼くとガラス質に近くなり、硬く焼き締まる。そして何より、あの雪のように白く、光が透けるほどの透明感。この美しさは、磁器土ならではのものです。薄くて繊細なアクセサリーや、シャープでモダンな食器を作りたいなら、磁器土は最高の素材になります。

 

いきなり初心者が手を出すのは、正直、挫折のもとかもしれません。でも、陶芸に慣れてきて、もっと表現の幅を広げたくなった時、ぜひ挑戦してみてほしい土です。この気難しいお嬢様を乗りこなせた時の達成感は、本当に格別ですよ。

作りたいものから逆算する!賢い粘土の選び方

結局のところ、どの粘土が良い・悪いということはありません。大切なのは、「あなたが何を作りたいか」です。作りたいものから逆算して、粘土を選ぶのが一番賢い方法です。

 

例えば、どっしりとした大きな壺や、ガーデニングで使うような大きな鉢を作りたいなら?当然、収縮率が低くて丈夫な、信楽土やそれに類する土が向いています。磁器土でそんな大きなものを作ろうとしたら、乾燥や焼成の段階で自重に耐えられず、歪んだり割れたりするリスクが非常に高くなります。

 

逆に、指輪やピアスのパーツのような、小さくて繊細なものを作りたい場合はどうでしょう。この場合は、きめが細かくて、焼くと硬く仕上がる磁器土がぴったりです。信楽土だと、土に含まれる石の粒が邪魔になって、細かい造形がしにくいかもしれません。

 

毎日使う、丈夫な食器を作りたいなら、収縮率が中くらいで、扱いやすさと焼き上がりの強度を両立した、並漉し粘土や半磁器土あたりが良い選択肢になります。

 

このように、作りたいものの「大きさ」「繊細さ」「用途」を考えて、それに一番寄り添ってくれる土を選んであげる。まるで、料理に合わせて食材を選ぶように。そうやって粘土と向き合えば、きっとあなたの創作活動はもっと豊かで楽しいものになるはずです。ぜひ、色々な粘土の特性を知って、あなたの「作りたい!」という気持ちにぴったりの相棒を見つけてあげてくださいね。

焦りは禁物!収縮トラブルを防ぐ「乾燥」という名の儀式

 

作品の形ができた後、焼き物作りで最も重要かつ、トラブルが起きやすい工程が「乾燥」です。ここで焦ったり、手を抜いたりすると、今までの苦労が水の泡…なんてことになりかねません。収縮による歪みや亀裂のほとんどは、この乾燥工程での失敗が原因なんです。これはもう、作品の無事を祈る「儀式」と言っても過言ではありません。ここでは、あなたの愛する作品を無事に焼き上がりまで導くための、乾燥のコツをお伝えします。

「早く乾け〜」は絶対ダメ!ゆっくり、じっくりが愛なんです

作品を作り終えると、「早く釉薬を塗りたい!」「早く焼きたい!」って気持ちが逸りますよね。わかります。でも、その「早く乾け〜」という気持ちこそが、最大の敵なんです。

 

なぜ急激な乾燥がダメなのかというと、先ほども少し触れましたが、作品の「表面」と「内部」で乾燥のスピードに差が生まれてしまうからです。例えば、エアコンの風や直射日光に当てたとしましょう。すると、作品の表面だけが急激に乾いて、ギュッと縮もうとします。でも、内部はまだ水分が残っていて、のんびりしている状態。この時、表面の縮む力に内部がついていけず、その歪みに耐えきれなくなった結果、「ピシッ!」とヒビが入ってしまうんです。

 

特に、お皿のフチやカップの飲み口、取っ手のような薄い部分は乾きやすく、底などの厚い部分は乾きにくい。この「乾きムラ」が、歪みや亀裂の最大の原因になります。

 

だから、乾燥で一番大切なのは、「ゆっくり、均一に」乾かすこと。作品全体が同じペースで、じわじわと水分が抜けていくような環境を作ってあげる。それはまるで、生まれたての赤ちゃんをそっと寝かせておくような感覚に近いかもしれません。作品への愛情が試される時間ですよ、これは。焦らず、じっくり、見守ってあげましょう。

どこに置くのが正解?乾燥場所のベストポジション

じゃあ、具体的にどこに置いて乾かすのが良いのでしょうか。ベストな乾燥場所の条件は、「直射日光が当たらず、風が直接当たらない、でも空気はよどんでいない場所」です。…って、なんだか注文の多いレストランみたいですよね(笑)。

 

まず、直射日光とエアコンや扇風機の風が直接当たる場所は絶対にNGです。これはもう、論外だと思ってください。急激な乾燥の温床になります。

 

理想的なのは、北向きの部屋の、棚の上などです。家の中で、一日を通して温度や湿度の変化が少ない場所を探してみましょう。意外と見落としがちなのが、棚の「上」と「下」の違い。空気は対流するので、同じ棚でも上段の方が乾燥が早く、下段の方が遅い傾向があります。大きな作品や特に慎重に乾かしたいものは、下の方に置く、といった工夫も有効です。

 

床に直接置くのもあまりお勧めできません。床付近は空気がよどみやすく、湿気がたまりやすいので、底の部分だけがいつまでも乾かない、という事態になりがちです。スノコなどを敷いて、少し浮かせてあげるだけでも、空気の通り道ができて均一な乾燥につながりますよ。自分の家の中の「一等地」を見つけて、そこを作品たちのための乾燥スペースにしてあげてください。

先人の知恵!ビニールと新聞紙を使いこなす乾燥マスターへの道

「ゆっくり、均一に」乾燥させるために、陶芸家たちが昔から使っている便利なアイテムがあります。それは、どこの家庭にもある「ビニール袋」と「新聞紙」です。この二つを使いこなせれば、あなたも立派な乾燥マスター!

 

まず、最も基本的なテクニックが、作品全体を大きなビニール袋でふんわりと覆う方法です。こうすることで、作品から蒸発した水分がビニール内にこもり、急激な乾燥を防ぐことができます。ポイントは「ふんわり」。作品にビニールがくっつかないように、空間を保って覆ってあげるのがコツです。完全に密閉するのではなく、少しだけ空気の出入り口を作っておくと、ごくごく穏やかに乾燥が進んでいきます。

 

次に、新聞紙の活用法。新聞紙は適度に水分を吸ってくれる性質があります。例えば、お皿のように平たいものは、板の上に新聞紙を敷き、その上に作品を置いて乾燥させると、底面からも適度に水分が抜けて、上下の乾燥スピードを均一に近づけることができます。

 

さらに上級テクニックとして、取っ手やフチなど、特に乾きやすくてヒビが入りやすい部分にだけ、濡らして固く絞った新聞紙や布を巻いておく、という方法もあります。こうすることで、他の部分が乾くスピードに、薄い部分を合わせることができるんです。

 

こうしたちょっとした手間で、作品の生存率が劇的に上がります。作品の形や大きさ、その日の天気や湿度を見ながら、「今日はビニールをしっかりかけておこう」「明日は少しビニールをめくってあげよう」と、対話するように乾燥をコントロールしていく。この過程も、陶芸の深い楽しみの一つなんですよ。

まとめ 縮むからこそ面白い!陶芸の奥深さを味わい尽くそう

 

さて、ここまで陶芸の「収縮」について、かなり熱く語ってきました。もう一度結論を言うと、陶芸作品は乾燥と焼成で10%〜20%縮みます。そして、この収縮を制する者が、陶芸を制すると言っても過言ではありません!

 

最初は「えー、縮むなんて面倒くさい…」と思うかもしれません。理想のビアカップがぐい呑みサイズになってしまった時の、あの私の絶望感を味わってほしくない、という気持ちはもちろんあります(笑)。でも、陶芸を続けていくうちに、きっとあなたも気づくはずです。この「縮む」という現象こそが、陶芸という趣味の、とてつもなく奥深い魅力の源泉なのだと。

 

なぜなら、収縮を理解するということは、粘土という素材の声を聴くことだからです。「この土はこれくらい縮むのか」「厚みが違うと、こんな風に歪むんだな」「ゆっくり乾かしてあげないと、悲鳴をあげてしまうんだな」。一つ一つの作品と向き合い、失敗を重ねるごとに、あなたは粘土と対話できるようになります。計算式や縮尺定規は、その対話のための強力な翻訳ツールです。

 

そして、その対話の末に、収縮を完璧にコントロールして、思い描いた通りの作品が窯から出てきた時の喜び!これはもう、何物にも代えがたい感動があります。小さくなること、形を変えることを乗り越えて、生まれ変わった我が子と再会するような感覚。この感動を一度味わってしまったら、もうあなたは陶芸の沼から抜け出せなくなるでしょう。

 

この記事を読んでくれたあなたが、これから陶芸の世界に飛び込むのなら、どうか収縮を恐れないでください。それは敵ではなく、面白くて、ちょっと気まぐれな、最高のパートナーです。たくさん失敗して、たくさん学んで、あなただけの「縮み」の物語を、ぜひ紡いでいってくださいね。