やっとの思いで完成させた、世界に一つだけの手作りの花瓶。ウキウキしながらお花を活けて、お気に入りの場所に飾って…数時間後。え、なんで?花瓶の周りが水浸しじゃないか!あぁ、神様…。この絶望、私にも痛いほど覚えがあります。手作りだから仕方ない?いえいえ、そんなことはありません。陶器の花瓶が水漏れするのには、ちゃーんと理由があるんです。そして、その原因さえ分かれば、対策だって立てられます。
この記事を読めば、あなたはもう水漏れごときで絶望する必要はなくなります。なぜ水が漏れるのかという根本的な理由から、制作段階で気をつけるべきプロの小技、そして万が一漏れてしまった時の「とっておきの裏技」まで、私の血と涙の経験をすべて詰め込みました。
この記事を読み終える頃には、水漏れの不安から解放され、自信を持って次の作品作りに挑戦したくなっているはず。あなたの陶芸ライフが、もっともっと楽しく、創造的なものになるためのお守りだと思って、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
安心してください。あなたが作る陶器の花瓶、水漏れは絶対に防げます。断言します。多くの初心者が「陶器って、なんか水が漏れるものなんでしょ?」と漠然とした不安を抱えているかもしれません。あるいは、実際に水漏れを経験して「やっぱり私には才能ないんだ…」なんて落ち込んでいるかもしれませんね。でも、それは違います。水漏れは才能の問題じゃなくて、知識と技術の問題。そして、そのどちらも後からいくらでも身につけられるものなんです。これから、その「なぜ?」と「どうすれば?」を、私の失敗談も交えながら、ねっちりと解説していきますよ。
まず大前提として知っておいてほしいことがあります。それは、「土はもともと水を通す」ということ。え、当たり前?そう、当たり前なんですけど、これが全ての基本なんです。公園の砂場に水を撒いたら染み込んでいくでしょう?あれと同じです。陶芸で使う粘土も、元はただの土。土の粒子と粒子の間には、目に見えない無数の隙間が空いています。スポンジをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
このスカスカのスポンジ状の土を、ただ乾燥させただけ(これを「素焼き」前の状態、「素地」と言います)の器に水を入れたらどうなるか。…もうお分かりですよね。あっという間に水が染み出して、びしょ濡れになります。だから私たちは、この土の粒子同士を熱でガッチリとくっつけて隙間をなくしたり、ガラス質の膜(釉薬)で表面をコーティングしたりして、水が通り抜けないように加工してやる必要があるんです。つまり、陶器の水漏れっていうのは、この「隙間を塞ぐ」作業がどこかで不十分だった、というサインなんですね。単純な話でしょ?
水漏れの最も大きな原因、それはズバリ「焼き締まっていない」ことです。焼き締まる、というのは、窯の中で高温に熱せられることで土の粒子が溶け始め、粒子間の隙間が埋まって密度が高くなる現象を指します。これを「焼結(しょうけつ)」なんて専門用語で言ったりもしますね。この焼き締まりが甘いと、当然ながら土にはまだ隙間がたくさん残ったまま。そこに水を入れれば、じわじわ〜っと時間をかけて水が外に滲み出してくるわけです。
「でも、ちゃんと窯で焼いてもらったんだけど…」と思うかもしれません。問題は「温度」と「土の種類」の関係です。土にはそれぞれ、「この温度まで上げないと焼き締まらないよ」という適正な焼成温度があります。例えば、1230℃で焼き締まる土を、1200℃でしか焼かなかったら?たった30℃の違いですが、これだけで焼き締まりの度合いは全然違ってきます。見た目はカチカチで、叩けばカンカンと音がするのに、水は漏れる…という悲劇が起こるんです。これはもう、粘土を買う時に「この土の焼成温度は何度ですか?」と確認するしかありません。陶芸教室なら先生が管理してくれているはずですが、自分で土を買うようになったら、絶対にチェックすべき最重要項目の一つですね。
もう一つの大きな原因が「釉薬(ゆうやく・うわぐすり)」の問題です。釉薬は、素焼きした器の表面にかけるガラス質の粉末のこと。これを高温で焼くことで溶かし、器の表面にガラスの膜を作って水の侵入を防ぐ役割があります。この釉薬がちゃんと溶けていなかったり、塗りムラがあったりすると、そこが水漏れの突破口になってしまうんです。
特に初心者がやりがちなのが、釉薬の厚塗り・薄塗り。薄すぎれば当然、ガラスの膜が不完全になって水が染み込みます。逆に厚すぎると、焼いている間に釉薬が縮んだり、ヒビが入ったりすることがあります。この目に見えないくらいの細かいヒビ(これを「貫入(かんにゅう)」と言ったりします。模様として楽しむ場合もありますが)から、水がじわじわと染み込んでいくんですね。また、花瓶の底の部分。釉薬をかける時に、高台(器の底の輪っかの部分)の裏まできっちり拭き取れていないと、焼いた時に釉薬が溶けて棚板にくっついてしまいます。それを防ぐために底の釉薬を拭き取るのですが、この拭き取りが甘かったり、逆に拭き取りすぎて肝心な部分まで釉薬がなくなっていたりすると、そこから水が漏れる…なんてことも。釉薬、奥が深いんですよ、本当に。
理論は分かった。でも、実際にどんな風に失敗するのか、生々しい話を聞きたいですよね?ええ、語りましょうとも。私の輝かしい(?)失敗の歴史を。今でこそこうして記事を書いたりしていますが、私も最初はひどいものでした。むしろ、失敗の数なら誰にも負けない自信があります。これからお話しするのは、私が陶芸を始めて半年くらいの頃にやらかした、今思い出してもちょっと冷や汗が出るような水漏れ事件です。笑ってやってください。そして、皆さんは同じ轍を踏まないでくださいね!
あれは、梅雨のジメジメした6月の土曜日の午後でした。陶芸教室に通い始めて半年、ようやく自分の作品と呼べるものが焼き上がってきた頃です。その日、私は一つの小さな一輪挿しを手に、意気揚々と帰宅しました。ちょっといびつだけど、自分で作った初めての花瓶。嬉しくて嬉しくて、早速庭に咲いていた紫陽花をちょこんと挿して、祖母から譲り受けたアンティークの小さな木製チェストの上に飾ったんです。うん、可愛い。我ながら天才じゃないか?なんて悦に入っていました。
その日の夜、友人と食事に出かけて深夜に帰宅。部屋の電気をつけた瞬間、私は固まりました。チェストの上が、水浸し。いや、水たまりになっている。そして、そこから滴った水が、チェストの側面を伝って床にも小さな池を作っていました。一瞬、何が起きたか分かりませんでした。天井から雨漏り?いや、違う。視線を上げると、あの、私のかわいい一輪挿しが、まるで汗をかくようにびっしょりと濡れているではありませんか。あぁ…お前か…。血の気が引くって、こういうことを言うんですね。アンティークのチェストはシミだらけ。もう、泣くに泣けませんでした。これが私の、記念すべき(?)最初の水漏れ事件です。原因は、今思えば完全に「焼き締まり不足」の土を使ったことでした。見た目は完璧だったのに…。
最初の事件から数ヶ月後。私は水漏れに対して、かなり神経質になっていました。土の焼成温度はしっかり確認し、焼き締まる土を選ぶ。成形も念入りに。そして迎えたリベンジマッチ。今度は少し大きめの、どっしりとした花瓶に挑戦しました。釉薬も、先生に「ムラにならないようにね」と口を酸っぱくして言われたので、それはもう丁寧に、慎重にかけました。底の処理も完璧。これならどうだ!と。
焼き上がった花瓶は、美しい瑠璃色に輝いていました。やった!今度こそ成功だ!私は勝利を確信し、またしてもウキウキで水を入れました。今度は学習しています。いきなり大切な家具の上には置きません。キッチンのシンクの中で、一晩様子を見ることにしました。そして翌朝。花瓶の外側は…濡れていない!やったー!大勝利!私は喜び勇んで、リビングのテーブルに花瓶を飾りました。
…が、悲劇は3日後に訪れました。ふと見ると、テーブルの上に敷いていたコースターが、じっとりと湿っているんです。え?なんで?花瓶の底をそっと持ち上げてみると、高台(底の輪っか)の部分だけが、まるで結露したかのようにしっとりと濡れている。あんなに注意したのに、なぜ?原因は、高台のほんの数ミリの釉薬の拭き残しでした。拭き取ったつもりでいた部分に、ほんのわずかに釉薬が残っていて、そこが焼成時に細かくヒビ割れていたんです。そこから毛細管現象で、3日もかけてじわ…じわ…と水が染み出していたんですね。もう、執念深すぎて怖い。陶器、恐るべし。ちゃんとやった「つもり」が一番危ないんだと、骨身に染みて理解した瞬間でした。
二度の失敗で、私の心はポッキリと折れていました。「もう私、花瓶作るのやめます…」。半泣きで教室の先生に愚痴をこぼしたところ、先生は「あー、やったね(笑)。みんな通る道だよ」と笑い飛ばし、こう言いました。「大丈夫、そんな時のために『目止め』っていう魔法があるから」。め、どめ…?
目止めとは、器の目に見えない細かい穴(目)を、デンプン質などで塞いで水漏れを防ぐ、古くから伝わる裏技のようなものだそうです。やり方はいくつかあるけど、一番簡単なのはお米のとぎ汁を使う方法。鍋に器と、器がかぶるくらいのとぎ汁を入れて、火にかける。沸騰させずに、弱火で15分から20分くらいコトコト煮る。火を止めたら、そのまま半日くらい放置して冷ます。たったこれだけ。とぎ汁に含まれるデンプンが、器の細かい隙間に入り込んで、穴を塞いでくれるんだとか。
「え、そんなことで本当に止まるんですか…?」半信半疑の私に、先生は「まあ、やってみなよ」とニヤリ。藁にもすがる思いで、あの瑠璃色の花瓶で試してみました。すると、どうでしょう。あんなに執拗に漏れてきた水が、ピタッと止まったんです!もう、感動しましたね。魔法かと思った。もちろん、これはあくまで応急処置的な側面もあって、完璧な方法ではないけれど、それでも「もうダメだ」と諦めかけていた作品が救われるなら、試さない手はありません。この「目止め」という知識は、私の陶芸ライフにおける、最大のお守りになりました。
さて、私の恥ずかしい失敗談はこれくらいにしておきましょう。ここからは、そもそも水漏れさせないためには、制作段階で何を意識すればいいのか、という具体的な話をしていきます。失敗から学んだ、血と汗と涙の結晶ともいえるノウハウです。結局のところ、後から目止めでなんとかするよりも、作る段階で水漏れしない器を作るのが一番ですからね。土選びから成形、釉薬のかけ方まで、ちょっとしたコツを知っているだけで、成功率は格段に上がりますよ。
全ての始まりは土選びから。大げさじゃなく、ここで勝負の半分は決まると私は思っています。陶芸用の粘土には、本当にたくさんの種類があります。ザラザラした質感の粗い土、しっとり滑らかな細かい土。色も白、赤、黒といろいろ。この中で、花瓶のような水を入れる器を作るなら、断然「目の細かい土」を選ぶのがおすすめです。
なぜかというと、単純に土の粒子が細かい方が、焼いた時に粒子同士の隙間が少なくなり、焼き締まりやすいからです。粒子が粗い土(砂や石の粒が多く混ざっている土など)は、どうしても隙間が多くなりがちで、同じ温度で焼いても水が漏れやすい傾向があります。もちろん、粗い土の持つザックリとした風合いも魅力的ですけどね。でも、まずは失敗したくない、という初心者のうちは、磁器に近いような目の細かい「並土(なみつち)」や「信楽の白土」あたりから始めるのが安全パイじゃないかな、と思います。陶芸用品店や教室の先生に「水漏れしにくい、花瓶向きの土はどれですか?」って素直に聞いちゃうのが一番早いですね。プライドは捨てて、聞ける人にはどんどん聞きましょう!
土を選んだら、次はいよいよ成形です。ろくろでも手びねりでも同じですが、ここで大事なのが「締め」という作業。ただ粘土をこねて形を作るだけじゃなくて、土の粒子をギュッと圧縮させて、密度を高めてあげるイメージです。これをやるのとやらないのとでは、強度も水漏れのしやすさも全然違ってきます。
ろくろの場合なら、何度も「土殺し(中心を出す作業)」を繰り返したり、器の壁を薄く引き上げる時に、内側と外側からしっかり指で挟み込んで圧をかけたりすることが「締め」につながります。手びねりの場合でも、紐状にした粘土を積み上げる時に、継ぎ目を指やヘラで内外からしっかり押さえて馴染ませること。タタラ作り(板状にした粘土で作る方法)なら、麺棒で粘土を伸ばす時に、ただ伸ばすんじゃなくて、ギュッギュッと圧をかけながら伸ばしていく。そして、成形が終わった後に、湿らせた「なめし皮」やスポンジで表面を滑らかに撫でてあげるのも、表面の土を締める効果があります。この一手間が、後々の安心感に繋がるんです。面倒くさがらず、愛を込めて、土を締めてあげてください。土は応えてくれますよ、きっと。
さあ、最後の関門、釉薬です。ここでの失敗は、本当に心が折れますからね…。特に注意したいのが、やっぱり花瓶の底、高台周りの処理です。先ほど私の失敗談でも話しましたが、ここが水漏れの最大のウィークポイントになりがち。
釉薬をかける前に、まず高台とその周辺に「撥水剤(はっすいざい)」を塗っておくのが定石です。これは、ロウソクのロウみたいなもので、塗った部分が釉薬を弾いてくれる便利な液体。これを塗っておけば、釉薬にドブンと浸けても、高台に釉薬がつきません。…と、言いたいところですが、撥水剤も万能じゃない。塗り方が薄かったりすると、弾ききれずにうっすら釉薬が乗ってしまうこともあります。だから、釉薬をかけた後は、必ず濡れたスポンジで高台の底をきれいに拭き取ること。この時、拭きすぎて高台の側面まで釉薬を剥がしてしまわないように、慎重に、慎重に。私はもう、息を止めてやります(笑)。「底から5mmは釉薬がない状態にする」くらいのマイルールを決めておくと、失敗が少ないかもしれません。この地味で神経を使う作業こそが、あなたの作品を水漏れの悪夢から救うのです。
ここまで対策をしても、それでも水漏れしてしまうことはあります。あります、というか、普通にあります。それが陶芸です。でも、大丈夫。チェストを水浸しにする前に、できることはまだ残されています。絶望の淵に立たされたあなたを救う、最終兵器ともいえる対処法を伝授しましょう。これもまた、先人たちの知恵と、現代の科学の結晶。諦めるのは、まだ早いですよ!
はい、出ました。私の救世主「目止め」。これはもう、水漏れしたらまず試すべき基本中の基本です。先ほどお米のとぎ汁を使った方法を紹介しましたが、実は他にも色々あります。例えば、片栗粉や小麦粉。とぎ汁がない時に、これらを水に溶かしたもので代用できます。要はデンプン質が隙間に入ればいいわけですからね。
やり方はとぎ汁と同じ。鍋に器と、片栗粉などを溶かした水を入れて、弱火でコトコト。注意点は、絶対に沸騰させないこと。沸騰させると、デンプンが固まりすぎてしまったり、器同士がぶつかって割れたりする危険があります。火を止めた後、ゆっくり冷ますのも大事なポイント。温度が下がる過程で、デンプンを含んだ水が器の奥深くまでじっくり浸透していくイメージです。この目止め、効果は絶大ですが、永久的ではありません。使っているうちに効果が薄れてくることもあるので、もしまた漏れてきたら、再度目止めをしてあげてください。器と長く付き合っていくための、お手入れの一つだと考えれば、なんだか愛着も湧いてきませんか?
とぎ汁も片栗粉も試した。でも、まだ漏れる…。そんなしぶとい水漏れには、現代化学の力を借りましょう。そう、市販の「陶磁器用水漏れ防止剤」です。これはケイ酸塩を主成分とした液体で、器の隙間に浸透してガラス質の結晶を作り、穴を物理的に塞いでしまうという、かなり強力なアイテムです。ホームセンターや陶芸用品店、ネット通販などで手に入ります。
使い方は製品によって多少違いますが、基本的には原液、もしくは水で薄めた液を器の中に入れて、一定時間放置するだけ。その後、液を捨てて乾燥させれば完了です。とぎ汁に比べて効果は強力で、持続性も高いと言われています。ただ、個人的にはちょっと悔しい。手作りの温かみのある作品に、化学的なものを入れることに、わずかな抵抗を感じてしまうんですよね…。まあ、これは私の個人的な感傷ですが(笑)。でも、どうしてもお気に入りの作品を救いたい、という時には、非常に頼りになる存在です。食品衛生法に適合している製品を選べば、食器にも使えるので安心ですよ。最後の砦として、その存在を知っておくだけでも心強いはずです。
これはもう、裏技中の裏技、というか最終手段です。「焼き直し(再焼成)」という方法があります。これは文字通り、一度焼いた作品を、もう一度窯に入れて焼くこと。特に「焼き締まり不足」が原因で水漏れしている場合に有効な可能性があります。前回よりも少し高い温度で焼き直すことで、今度こそ土をしっかり焼き締めてしまおう、という作戦です。
ただし!これは非常にリスクの高い賭けです。まず、一度焼いた器は衝撃に弱くなっているので、窯に入れるまでの取り扱いで割れる可能性があります。また、釉薬が溶けすぎて流れてしまったり、色が思ったものと全然違う色に変化してしまったり、最悪の場合は器そのものが歪んだり割れたりすることもあります。成功すれば天国、失敗すれば地獄。まさにハイリスク・ハイリターン。これをやるには、窯の知識と経験が豊富な先生や窯元さんの協力が不可欠です。
自分で判断して「もう一回焼いちゃえ!」なんてことは、絶対にやめてくださいね。もし挑戦してみたいなら、必ずプロに相談すること。まあ、でも、ここまで来たら「これはこういう作品だったんだ」と諦めて、次の作品作りに気持ちを切り替えるのが、精神衛生上は一番いいかもしれませんね(笑)。
ここまで、水漏れの原因と対策について、これでもかというくらい語ってきました。でも、一番伝えたいのは、テクニックそのものよりも、実はこの「心構え」の部分だったりします。水漏れは、怖いです。ショックです。でも、それを恐れすぎて、土に触れる楽しさまで忘れてしまったら、元も子もないじゃないですか。失敗は、あなたの作品に深みを与えるスパイスみたいなもの。そう考えられるようになれば、あなたの陶芸ライフはもっと豊かになるはずです。
かの有名なエジソンは言いました。「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ」と。…かっこいい!私たち陶芸家(の卵)も、この精神でいきましょうよ!水漏れは失敗じゃありません。「この土とこの焼き方だと水が漏れる、という発見」なんです。そう、これは壮大な実験なんです。
そう考えると、ちょっとワクワクしてきませんか?(しない?)でも、本当にそうなんです。プロの陶芸家だって、新しい土や釉薬を試す時は、必ずテストピースを何個も作って、どういう結果になるか実験します。その過程で、水漏れなんて日常茶飯事。だから、初心者が水漏れしたって、何も恥ずかしいことじゃない。むしろ「お、ちゃんと陶芸やってる証拠じゃん!」くらいに胸を張っていいんです。その経験値が、次の素晴らしい作品を生み出すための、かけがえのない土台になるんですから。水漏れした花瓶を見るたびに「あー、ここから私の伝説は始まったんだよな…」なんて、将来語れる日が来ますよ。うん、たぶん。
それでもやっぱり、水漏れする花瓶を目の前にすると、落ち込みますよね。分かります。そんな時は、発想を転換してみましょう。水が漏れるなら、水を入れなきゃいいじゃない!そう、ドライフラワー専用の花瓶として生まれ変わらせてあげるんです。これが、意外としっくりくるんですよ。
生花にはない、ドライフラワーの持つ儚げでシックな雰囲気。それが、ちょっといびつだったり、釉薬の調子が完璧じゃなかったりする手作りの器と、驚くほどマッチするんです。完璧じゃないもの同士が寄り添うことで生まれる、新しい調和。なんだか詩的じゃないですか?他にも、ペン立てにしたり、キッチンでお玉や菜箸を立てておいたり、使い道は無限大です。水漏れ=失敗、と決めつけて捨ててしまうんじゃなくて、「この子にはどんな役割が似合うかな?」と考えてあげる。それもまた、作り手としての愛情の形だと思うんです。そうやって、全ての作品に居場所を見つけてあげられたら、素敵ですよね。
最後に、一番大事なことを。陶芸において、完璧を目指さないでください。…え?って思いますよね。でも、本当なんです。特に初心者のうちは、「まっすぐな線」とか「綺麗な円」とか「均一な厚み」とか、そういう「完璧さ」に囚われがち。でも、土って、もともと自然物なんです。人の手でこねられて、火という自然の力で焼かれて、初めて形になる。そこに、機械製品のような完璧さを求めること自体が、ちょっと無理な話なのかもしれません。
それよりも、その時の自分の気持ちや、土の感触、ろくろの回転との対話、そういうものを楽しんでみてください。ちょっと歪んだっていいじゃない。指の跡が残ったっていいじゃない。それが、世界に一つしかない、あなたの「味」になるんですから。水漏れも、その「味」の一つ、くらいに大きく構えてみましょう。完璧を目指すプレッシャーから解放された時、あなたの手はもっと自由に、もっと大胆に動くようになります。そして、皮肉なことに、そういうリラックスした状態の時の方が、結果的にいいものができたりするんですよね。不思議なもんです。だから、大丈夫。楽しんで、たくさん失敗してください。それが、あなただけの最高の作品を生み出す、一番の近道なんですから。
さて、ここまで「陶器の花瓶の水漏れ」という、ちょっと憂鬱なテーマについて、私の経験と情熱を込めて語り尽くしてきましたが、いかがでしたでしょうか。せっかく手作りした愛しい作品が水浸しになる悲劇は、できれば誰にも味わってほしくありません。この記事で伝えたかったことをまとめると、水漏れの主な原因は「焼き締まり不足」と「釉薬の問題」の二つがほとんどだということ。そして、それを防ぐためには、制作段階で「目の細かい土を選ぶ」「成形でしっかり土を締める」「高台周りの釉薬処理を丁寧に行う」といった、ちょっとしたコツを意識することが何よりも大切だということです。
それでももし、万が一水漏れしてしまっても、もうあなたは絶望する必要はありません。お米のとぎ汁や片栗粉を使った「目止め」という、古くから伝わる優しい魔法があります。それでもダメなら、市販の防止剤という現代科学の力も借りられます。そして何より、失敗を恐れないでください。水漏れは、あなたが真剣に陶芸と向き合った証であり、次へのステップアップに必要な貴重なデータです。完璧じゃないからこそ愛おしい。それが手作りの器の、最大の魅力じゃないでしょうか。ドライフラワーを生けるなど、発想を転換すれば、どんな作品にも必ず素敵な居場所が見つかります。この記事が、あなたの陶芸ライフを少しでも明るく、楽しいものにするためのお守りになれば、私にとってこれ以上の喜びはありません。さあ、土の感触を思い出して。次の作品を作りにいきましょう!