「陶芸 何日かかる?」の疑問に終止符!体験から本格コースまで、あなたの知りたい日数を全部教えます

「陶芸って、土をこねて形を作ったらすぐ完成!」なんて、もしかして思っていませんか? ええ、わかります。でもね、実はそこからがとんでもなく長い旅の始まりなんです。

 

作品の種類や作り方で大きく変わりますが、1日陶芸体験なら形作りはその日のうちに終わり、完成した作品が手元に届くのは大体1〜3ヶ月後。もし陶芸教室に通って本格的に作るなら、一つの作品が完成するまでに数ヶ月から、大作になれば半年以上かかることもザラにあります。

 

「え、そんなにかかるの!?」って、今、声に出して驚きませんでしたか? ですよね。私も初めてその事実を知った時、「何日かかるの?」って必死に検索して、その期間の長さに一瞬、心が折れかけましたもん。陶芸って、もっとこう、サクッと作れる趣味だと思ってたのに…って。

 

でも、この記事を読めばもう大丈夫。陶芸の全工程と、それぞれにどれくらいの日数がかかるのか、手に取るようにわかります。そして、ただ日数がわかるだけじゃありません。その「待つ時間」こそが、自分の手から生まれた作品への愛着を爆発的に育む、最高のスパイスになるってことにも気づくはずです。この記事を読み終える頃には、あなたも陶芸教室の予約ボタンを、ポチりたくてたまらなくなっている…かもしれませんよ?

陶芸完成までには最低1ヶ月以上かかります!

 

いきなり現実的な話をしてしまいますが、これが真実なんです。自分で作った器が食卓に並ぶまでには、どんなに短くても1ヶ月以上はかかると考えておくのがリアルなところ。もちろん、これはあくまで「最短で」の話。実際にはもっと長くなることの方が多いです。でも、どうかここで「やっぱりやめようかな…」なんて思わないでください!この時間こそが、陶芸の醍醐味の一つなんですから。

まずは気軽に!陶芸体験(1day)の場合の流れと期間

一番手軽に陶芸に触れられるのが、いわゆる「1日陶芸体験」。旅行先のアクティビティなんかでよく見かけますよね。これは本当に気軽で、おすすめです。

 

体験当日にやることは、主に「成形(形を作ること)」だけ。時間にして、だいたい1時間半から2時間くらいでしょうか。先生が丁寧に教えてくれるので、粘土遊びの延長みたいな感覚で、お茶碗や湯呑み、お皿などを作ることができます。手びねりか、電動ろくろかを選べるところが多いですね。

 

そして、形を作り終えたら、その日の作業は終了。「え、もう終わり?」って思うかもしれませんが、終わりなんです。ここから先の工程、つまり「乾燥」「素焼き」「釉薬がけ」「本焼き」といった面倒で時間のかかる作業は、全部工房のスタッフさんがやってくれます。最高ですよね?

 

で、肝心の日数ですが、作ったものが手元に届くのは、だいたい1ヶ月後から、長いところだと3ヶ月後。忘れた頃に宅配便で届く感じです。「あ、そういえば私、沖縄でシーサー作ってたんだった!」みたいな。でも、箱を開けた瞬間の感動は格別ですよ。自分が作ったものが、ちゃんとツルツルピカピカの「作品」になってるんですから。

じっくり向き合う陶芸教室(月謝制など)の場合の流れと期間

もしあなたが「趣味として陶芸を本格的にやってみたい」と考えているなら、月謝制などの陶芸教室に通うのが王道です。この場合、時間の流れ方は1日体験とは全く異なります。

 

教室では、1日体験では工房任せだった工程も、ほとんど自分でやることになります。(焼成は共同の窯で先生がやってくれますが)

 

例えば、週1回通う教室だとすると、こんな感じのスケジュールになることが多いです。

 

1週目:成形(手びねりや電動ろくろで形を作る)
2週目:削り(高台など、半乾きの状態の作品を削って形を整える)
〜ここから数週間、作品は乾燥の期間へ〜
3〜4週目:乾燥待ちの間、次の新しい作品の成形を始める
5週目:最初の作品がしっかり乾燥したら、先生が素焼きしてくれる
6週目:素焼きが終わった作品に釉薬をかける
〜ここからまた、本焼きの窯のスケジュール待ち〜
7〜8週目:ついに本焼き!窯から出てきた作品とご対面!

 

…と、こんな具合です。どうです?めちゃくちゃ時間がかかるでしょう?一つの作品を追いかけると、完成までにスムーズにいっても2ヶ月近くかかる計算になります。しかも、教室では複数の作品を同時進行で作っていくことが多いので、常に「成形中のもの」「乾燥中のもの」「素焼きを待つもの」といった、いろんなステータスの我が子(作品)たちが棚に並んでいる状態になります。

 

でも、これがまた楽しいんですよね。毎週教室に行くたびに、自分の作品たちがちょっとずつ成長しているのを見るのが、たまらない喜びになるんです。

なぜそんなに時間がかかるの?乾燥と焼成という名の試練

「なんでそんなに時間がかかるの?」という疑問の答えは、ズバリ「乾燥」と「焼成」にあります。この二つの工程は、絶対にショートカットできない、陶芸における最も重要で時間のかかるプロセスなんです。

 

土は水分を含んでいるからこそ、自由に形作ることができます。でも、その水分が残ったまま窯で焼いてしまうとどうなるか…。窯の中の急激な温度上昇で、粘土内部の水分が一気に水蒸気になろうとして、逃げ場を失い…パーン!と音を立てて作品が割れてしまいます。これを「焼成破裂」とか言ったりしますが、要は水蒸気爆発みたいなものです。想像しただけで悲しいですよね。だから、窯に入れる前に、1週間から数週間かけて、じーーーーっくりと水分を抜いてあげる必要があるんです。焦りは禁物。絶対に。

 

そして「焼成」、つまり窯で焼く工程。これもまた時間がかかります。一気に温度を上げてしまうと作品が割れる原因になるので、何時間もかけてゆっくり温度を上げ、ピークの温度(大体1230℃とか!)でしばらく維持し、その後また何時間もかけてゆっくり冷ます必要があります。窯の扉を開けられるのは、完全に熱が冷めてから。この一連の焼成プロセスだけで、丸2〜3日かかることも普通です。

 

この「待つしかない時間」があるからこそ、陶芸は完成までに最低でも1ヶ月以上という長い時間が必要になるというわけ。ご理解いただけましたでしょうか?

【ステップ1】土と戯れる!成形にかかる時間と日数

 

さて、ここからは具体的な工程を一つずつ、もっと詳しく見ていきましょう。まずは陶芸の華、形を作る「成形」の工程です。粘土の塊が、あなたの手によって命を吹き込まれる最初のステップ。最高にクリエイティブで、最高に楽しい時間です!この成形にかかる時間は、作るものや技法によって全然違ってきます。

手びねり(玉作り・ひも作り・タタラ作り)なら数時間で形になる

陶芸初心者の方がまず最初に触れるのが、この「手びねり」という技法ではないでしょうか。電動ろくろを使わずに、文字通り自分の手だけで形を作っていく方法です。これにはいくつかの種類があります。

 

一番原始的で簡単なのが「玉作り」。粘土の塊に親指をぐりぐりと入れて、そこから少しずつ壁を広げて器の形にしていく方法です。湯呑みとか、小さなお茶碗ならこれで十分作れます。時間もそんなにかかりません。集中すれば、1時間もかからずに一つ作れてしまうでしょう。

 

次にポピュラーなのが「ひも作り」。粘土でひもを作って、それを粘土の土台の上にぐるぐると積み上げていく方法です。小学校の図工の時間にやりませんでした?あれです、あれ。玉作りよりも大きなものや、自由な形が作りやすいのが特徴です。マグカップの取っ手をつけたり、ちょっと複雑な形に挑戦したり。これは少し時間がかかりますね。じっくりやると2〜3時間はあっという間に過ぎてしまいます。

 

そして「タタラ作り」。これは、粘土を麺棒みたいなもので板状(タタラ板)に伸ばして、その板を組み合わせたり、型に押し付けたりして形を作る方法です。お皿や角皿、箱ものなど、カチッとした形のものが作りやすい。これも、デザインによりますが1〜3時間くらい見ておくと良いでしょう。

 

手びねりの良いところは、とにかく自分のペースで、じっくり土と対話しながら作れること。歪んだり、指の跡が残ったりするのも、全部「味」になります。完璧じゃなくていい、その不完全さこそが愛おしい。そんな手作りの温かみが出せるのが、手びねりの最大の魅力だと私は思います。

電動ろくろは慣れが必要!最初は歪んで当たり前、でもそれが楽しい

陶芸と聞いて、多くの人がイメージするのがこの「電動ろくろ」ではないでしょうか。高速で回転する台の上で、濡れた粘土にそっと手を添え、にゅーっと器が立ち上がっていく…あのシーン、憧れますよね!

 

でも、言っておきます。あれ、めちゃくちゃ難しいです。テレビや映画で見るみたいに、最初からスイスイできる人なんて、たぶんいません。私も初めてやった時は、本当にひどかった…。

 

まず、ろくろの中心に粘土を据える「土殺し(土ごろし)」という作業からして、もう意味がわからない。「先生、無理です!粘土が言うこと聞きません!」って半泣き状態。中心が取れていないと、回した瞬間に粘土がぐわんぐわんに暴れまくって、ただの泥の塊が遠心力で飛び散るだけ。え、これどうすんの?ってなります。

 

やっとのことで中心が出せて、いざ形を作ろうとしても、ちょっと指に力が入っただけでぐにゃり。薄くしようとしたら、あらぬ方向に伸びていって、最終的にはヘロヘロの謎物体が完成。これをね、何度も何度も繰り返すんです。一個のお茶碗を作るのに、初心者のうちは1時間以上格闘することも珍しくありません。正直、最初は心が折れそうになります。「私、才能ないかも…」って。

 

でもね、ある瞬間、ふっとコツが掴める時が来るんですよ。「あ、この力加減か!」とか「この指の角度か!」っていうのが、体に染み付く瞬間が。その時に、自分の思った通りの形に粘土がスッと応えてくれた時の快感といったら!もう、最高です。ドーパミンがドバドバ出ます。この「できなかったことができるようになる」感覚が、電動ろくろの最大の魅力であり、多くの人を虜にする理由なんだと思います。歪んで当たり前。失敗して当たり前。そのプロセス全部を楽しめるようになったら、あなたも立派な陶芸沼の住人です。

ちょっと脱線話 私が初めてろくろを回した日の大失敗

ここでちょっと、私の恥ずかしい昔話をさせてください。あれは今から…何年前だろう。とにかく、私が初めて陶芸教室の体験で電動ろくろに座った日のことです。

 

隣には、見るからにベテランって感じのおばあちゃん。その隣には、私と同じくらいの歳で、これまた体験に来たであろうカップルがイチャイチャしながらろくろを回していました。キーッ、羨ましい!…じゃなくて。

 

先生に「はい、じゃあまず土殺しからねー。力を抜いて、粘土の中心を感じてー」なんて言われても、もうガッチガチ。肩にも腕にも指先にも、ありったけの力が入っちゃってる。粘土は私の言うことなんて全く聞かず、ただただ遠心力に負けて、外へ外へと逃げていくばかり。「え、なんで?」「先生!助けてください!」を何度連呼したことか。

 

30分くらい格闘したでしょうか。やっとのことで、なんとか中心らしきものが出て、お茶碗を作ることになりました。先生の手助けを借りながら、少しずつ器の形になっていく粘土。おお、すごい!私にもできるかも!と感動したのも束の間。調子に乗って、縁を薄くしようと指先にほんの少し力を込めた瞬間です。

 

ぐにゃっ。

 

さっきまで綺麗な円を描いていたはずの器の縁が、情けない波形を描き、次の瞬間には遠心力に耐えきれず、デロ〜ンと溶けたアイスクリームみたいに崩れ落ちていきました。私の目の前には、ただの回転する泥の塊。あっけにとられて、数秒間、声も出ませんでした。隣のカップルがクスクス笑っている気配を感じて、顔から火が出るかと思いましたね。

 

結局その日は、ほとんど先生に作ってもらったようなお茶碗を一つだけ完成(?)させ、敗北感にまみれて帰宅しました。でも、不思議と「悔しい!」「次は絶対に自分の力で!」という気持ちが湧いてきたんです。あの日の大失敗がなかったら、もしかしたらここまで陶芸にハマっていなかったかもしれません。だから、これから始めるあなたも、失敗を恐れないでください。失敗は、最高の思い出と、次へのエネルギーになりますから!

【ステップ2】じっくり待つべし!乾燥工程のリアルな日数

 

成形の楽しさに満ちた時間の後には、地味で、しかしとてつもなく重要な「乾燥」の工程が待っています。はっきり言って、この工程に楽しさはありません。あるのは、ひたすらな「待ち」と、一抹の「不安」だけ。でも、この時間を乗り越えなければ、あなたの作品は決して完成しないのです。

最低でも1週間!焦りは禁物、じっくり自然乾燥

成形が終わったばかりの粘土は、水分をたっぷり含んでいて、ふにゃふにゃの状態です。この状態の作品を、まずは風通しの良い日陰でゆっくりと乾かしていきます。なぜ日陰なのか?それは、直射日光やエアコンの風などを当てて急激に乾かすと、表面だけが先に乾いて、内部の水分との収縮率の差で「ヒビ」が入ってしまうからです。

 

この乾燥期間、どれくらいかかると思いますか?作品の大きさや厚み、季節や湿度によって大きく変わりますが、最低でも1週間は見ておく必要があります。薄いお皿なら数日で乾くこともありますが、厚みのあるマグカップや壺のようなものだと、2週間以上かかることもザラです。

 

この期間、本当にやることがないんです。ただただ、棚に置かれた自分の作品が、静かに乾いていくのを見守るだけ。「早く次の工程に進みたい!」という気持ちが逸るのを、ぐっとこらえる時間。まるで、さなぎが蝶になるのを待つような、そんなじれったい期間なのです。でも、この「待つ」という行為が、作品への愛着を深めてくれるんですよね。「ちゃんと乾いてるかな」「ヒビ、入ってないかな」って、まるで我が子の成長を見守る親のような気持ちになってくるんですから、不思議なものです。

なんで乾燥させなきゃいけないの?水分が引き起こす悲劇

さっきも少し触れましたが、なぜこんなに時間をかけて乾燥させなければいけないのか、もう少し詳しくお話ししますね。これを知っていると、ただ待つだけの時間にも意味を見出せるはずです。

 

粘土というのは、焼くと水分が抜けて縮みます。もし、作品の中に水分が残ったままの状態で、800℃近くまで温度が上がる「素焼き」の窯に入れてしまったら…。内部の水分は100℃を超えたあたりで一気に沸騰し、水蒸気になります。液体が気体になると、体積が一気に増えますよね?理科の授業で習ったやつです。

 

その膨張した水蒸気が、まだ柔らかい粘土の壁を内側から「ドン!」と突き破ろうとする。その結果、作品は無残にも木っ端微塵に砕け散る、というわけです。これを業界用語(?)で「爆発した」なんて言ったりします。自分が丹精込めて作った作品が、窯の中で爆死する…。想像するだけで悪夢ですよね。

 

しかも、悲劇はそれだけではありません。もし自分の作品が爆発したら、その破片が窯の中にいる他の人の大切な作品に当たって、傷つけたり、一緒に壊してしまったりする可能性もあるんです。これはもう、テロ行為と言っても過言ではありません。…いや、過言かな。でも、それくらい、周りに迷惑をかけてしまう重大な事故なんです。

 

だからこそ、陶芸家や教室の先生は、乾燥には細心の注意を払います。焦って窯に入れて、悲劇を生むくらいなら、念には念を入れて、もう一週間長く乾かした方がずっといい。この「石橋を叩いて渡る」ような慎重さこそが、陶芸においては何よりも大切なのです。

【ステップ3】ここからが本番!焼成(素焼き・本焼き)にかかる日数

 

長い長い乾燥期間を経て、カチカチに乾いたあなたの作品。いよいよ、陶芸のクライマックスとも言える「焼成(しょうせい)」の工程へと進みます。ここからは、土と炎が織りなす化学変化の世界。人間の手を離れ、作品が自らの力で「やきもの」へと生まれ変わる、神秘的な時間です。この焼成も、一筋縄ではいかない、時間のかかるプロセスなんですよ。

まずは「素焼き」で強度アップ!窯入れから完了まで約1日

完全に乾燥した作品は、まず「素焼き(すやき)」という工程に回されます。これは、本番の焼成(本焼き)の前に、比較的低い温度(だいたい700〜800℃くらい)で一度焼いておく作業です。

 

なんでこんなことをするかというと、理由は主に二つ。一つは、この後の「釉薬(ゆうやく)がけ」をしやすくするため。乾燥しただけの状態の作品は、水につけると溶けてしまうくらい、とても脆いんです。そんなものに液体の釉薬をかけたら、形が崩れてしまいますよね。素焼きをすることで、レンガくらいの強度になり、吸水性も適度になるので、釉薬が綺麗にかかるようになります。

 

もう一つの理由は、本焼きでの破損を防ぐため。素焼きの段階で、粘土に含まれる有機物などを燃やし切っておくことで、本焼きの際にガスが発生して作品が割れたりするのを防ぐ効果があります。

 

この素焼き、窯に作品を詰めて、火を入れて、目標の温度まで上げ、火を止めて、ゆっくり冷ます…という全工程で、だいたい丸1日(24時間)くらいかかります。小さな電気窯ならもっと短いですが、それでも半日仕事です。地味な工程に見えますが、本焼きを成功させるための、とっても重要な下準備なんですよ。

運命の「釉薬がけ」!色と質感を決める魔法の時間

素焼きが終わった作品は、赤茶色っぽい、ザラザラした質感になっています。例えるなら、植木鉢みたいな感じ。ここに、いよいよ色とガラス質をつけていく「釉薬がけ(ゆうやくがけ、または、せゆう)」の作業を行います。

 

釉薬というのは、簡単に言うと「ガラスの粉末を水に溶かした液体」です。このドロドロの液体を、素焼きした作品にかけたり、浸したり、塗ったりします。この時点では、ただのくすんだ色の泥水にしか見えません。本当にこんなものが、あの綺麗な青色や、深みのある緑色になるの…?と、誰もが最初は疑いの目を向けます。私もそうでした。

 

でも、これが窯の中で高温で焼かれることで、釉薬の成分が溶けてガラス化し、あの美しい色とツヤが生まれるんです。まさに化学の魔法!

 

どの釉薬を選ぶかで、作品の仕上がりは全く違うものになります。透明な釉薬、マットな質感になる釉薬、金属的な光沢が出る釉薬…。何十種類もある釉薬の中から「この形には、どの色を合わせようか」と考える時間は、最高に楽しくて、そして最高に悩ましい時間です。この釉薬がけの作業自体は、一つの作品につき数十分もあれば終わります。でも、その選択が、作品の運命を決めると言っても過言ではありません。

最後の大仕事「本焼き」!1200℃以上の世界で器が生まれる瞬間

釉薬をかけ終わったら、いよいよ最終工程の「本焼き(ほんやき)」です。これが、陶芸における最後の、そして最大の試練であり、クライマックス。

 

作品を再び窯に詰め、今度は素焼きよりもずっと高い温度、だいたい1200℃〜1250℃くらいまで、じっくりと時間をかけて温度を上げていきます。この高温の中で、粘土は固く焼き締まり(これを「焼結」と言います)、釉薬は溶けてガラスの膜となって作品をコーティングします。土くれが、本当の意味で「陶磁器」に生まれ変わる瞬間です。

 

この本焼きも、窯の大きさによりますが、火を入れてから完全に冷まして窯の扉を開けられるようになるまで、丸2日から3日はかかります。この間は、もう祈ることしかできません。「窯の神様、どうか私の作品を無事に焼き上げてください…!」と。

 

そして訪れる、運命の「窯出し」。ゆっくりと窯の扉が開けられ、中から熱気を帯びた作品たちが姿を現す瞬間。その時の感動は、言葉では言い尽くせません。自分がデザインし、悩み、待ち続けたものが、想像通りの、あるいは想像を遥かに超える美しい姿で目の前に現れる。釉薬が思いがけない変化(これを「窯変」と言います)を見せてくれることもあります。この感動があるから、陶芸家たちはみんな、この長く険しい道のりを乗り越えられるんだと思います。本当に、何度経験しても鳥肌が立つ瞬間ですよ。

結局どうやって始めるのが一番いいの?目的別おすすめプラン

 

ここまで読んで、「陶芸、思ったよりずっと大変そう…でも、やっぱりやってみたい!」と思ってくれた、そこのあなた。素晴らしいです!では、そんなあなたにピッタリの「始め方」はどれなのか。ここでは、あなたの目的別に、3つのプランを提案させてください。自分に合いそうなものを選んで、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。

とにかく一度作ってみたい!なら「1日陶芸体験」が絶対おすすめ

「陶芸に興味はあるけど、趣味にするかはまだわからない」「とりあえず、あの電動ろくろを回してみたい!」「旅行の思い出に何か作りたい」…そんな風に考えているなら、もう迷うことはありません。絶対に「1日陶芸体験」に参加すべきです。

 

理由は簡単。一番面倒で時間のかかる「乾燥」と「焼成」の工程を、全部工房にお任せできるからです。あなたは、一番楽しい「成形」の部分だけを、良いとこどりで体験できる。これほど効率の良いことはありません。

 

2時間程度の体験で、非日常的な土との触れ合いを存分に味わえる。それでいて、1〜3ヶ月後には、プロの手で完璧に仕上げられた自分の作品が手元に届く。費用も、数千円程度で済むところがほとんどです。こんなにコスパの良い娯楽、他にありますか?いや、ないでしょう!

 

もし、体験してみて「あれ、なんか違うな」と思えば、それで終わりでいいんです。でも、もし「うわ、何これ、めちゃくちゃ楽しい!」と感じたら、その時初めて、次のステップである陶芸教室を検討すればいい。迷っているなら、まずこれやっとけ!と、私は声を大にして言いたいです。失敗したっていいじゃないですか。それもまた、最高の思い出になりますから。

じっくり自分の作品と向き合いたいなら「陶芸教室(月謝制)」へ

1日体験で陶芸の魅力に目覚めてしまった、あるいは、最初から「長く続けられる趣味を見つけたい」と思っているあなた。そんな本気モードの方には、月謝制やチケット制の「陶芸教室」に通うことを強く、強くおすすめします。

 

教室に通う最大のメリットは、成形から釉薬がけまで、一連の工程を自分の手で経験できること。時間がかかる分、一つ一つの作品に対する思い入れは、1日体験の比ではありません。削りの工程で形をシャープに整えたり、何十種類もある釉薬の中から自分のイメージに合うものを選んだり…。そうやって、じっくりと自分の「作りたいもの」と向き合う時間は、何物にも代えがたい充実感を与えてくれます。

 

それに、先生から体系的に技術を学べるのも大きな魅力です。最初は上手くいかなくても、先生のアドバイスを受けながら練習を重ねるうちに、少しずつ出来ることが増えていく。その成長の過程が、本当に楽しいんです。

 

あと、意外と見過ごせないのが「仲間ができる」こと。同じ趣味を持つ人たちと「その釉薬、いい色ですね!」とか「ろくろ、難しいですよね〜!」なんて言葉を交わすのは、すごく刺激になります。他人の作品を見るのも、めちゃくちゃ勉強になる。ただ黙々と作るだけじゃない、そのコミュニティとしての楽しさも、陶芸教室の醍醐味の一つですよ。

いや私は家でやりたいんだ!「自宅陶芸」のハードルと期間

中には、「教室に通うのは時間的に難しい」「誰にも邪魔されず、自分のペースで没頭したい」「究極的には、自分の窯を持ちたい!」なんていう、熱い情熱を持った方もいるかもしれません。いわゆる「自宅陶芸」です。ロマンがありますよね!

 

結論から言うと、自宅陶芸は可能ですが、かなりの覚悟と初期投資が必要です。まず、道具。手びねりだけなら粘土と数種類の道具で始められますが、電動ろくろとなると、安くても数万円、本格的なものなら数十万円します。

 

そして、最大のハードルが「焼成」です。粘土を焼くための「陶芸窯」は、小さなものでも10万円以上、大きなものになると100万円を超えます。しかも、設置場所の確保や、電気工事が必要になる場合も。正直、かなりハードルが高いです。

 

もちろん、「焼成だけ近所の陶芸教室やサービスにお願いする」という手もあります。これなら、自宅で成形と乾燥を行い、焼いてもらう作品を持ち込むだけ。これならグッと現実的になりますね。
ただ、自宅でやるということは、乾燥の管理も、粘土の処理も、全部自分で責任を持ってやらなければいけないということ。特に粘土の粉塵は、吸い込むと健康に良くないので、掃除や換気には細心の注意が必要です。

 

自由度はMAXですが、その分、手間もコストもかかるのが自宅陶芸。まずは教室で一通り学んでから、ステップアップとして検討するのが、一番賢い道かもしれませんね。

まとめ 陶芸にかかる時間は作品への愛情を育む魔法の時間です

 

さて、「陶芸って何日かかるの?」という素朴な疑問から始まったこの記事も、いよいよ終わりです。ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

 

もう一度結論を言うと、陶芸体験なら作品が手元に届くまで1〜3ヶ月。陶芸教室でじっくり作れば、一つの作品が完成するまでに2ヶ月以上はかかります。そう、陶芸は、とにかく時間がかかる趣味なんです。せっかちな人には向いていないのかもしれない、なんて思いましたか?

 

でも、私は違うと思うんです。この「時間のかかり方」こそが、陶芸という趣味の、最大の魅力なんじゃないかって。成形して、乾燥を待って、素焼きして、釉薬を選んで、本焼きして…。一つ一つの工程に手間と時間をかけ、自分の作品が少しずつ完成に近づいていくのを見守る。その過程で、ただの土の塊だったものが、かけがえのない「我が子」のような存在に変わっていく。この感覚は、インスタントに結果が出る現代の趣味では、なかなか味わえないものだと思うんです。

 

窯から出てきた作品と対面した時の、あの胸が熱くなるような感動。自分の手で作った、世界に一つだけの器でコーヒーを飲む朝の、ささやかな幸福感。これらを一度でも味わってしまったら、もう、あなたも陶芸の沼から抜け出せなくなりますよ。

 

時間はかかります。でも、それ以上の感動と喜びが、必ずあなたを待っています。この記事が、あなたの「最初の一歩」を後押しできたなら、こんなに嬉しいことはありません。さあ、あなたも一緒に、土にまみれる生活を始めてみませんか?