【陶芸初心者必見!】焼くと形が変わる?それ、失敗じゃないんです。歪みや変化こそが陶芸の本当の面白さだった!

陶芸、始めてみたいけど「せっかく時間をかけて作ったのに、焼いたら形が変わっちゃった…」なんてことになったら、と想像するとちょっと怖いですよね。わかります、すっごくわかります!私も最初はそうでした。でも、この記事を読みに来てくれたあなたに、まず結論からお伝えさせてください。陶芸で、焼くと形が変わるのは当たり前!そして、その予測不能な変化こそが、実は陶芸にどっぷりハマってしまう最大の魅力なんです。

 

この記事を読み終える頃には、「形が変わるの、怖くない!むしろ楽しみ!」と、あなたの不安はワクワクに変わっているはずです。なぜ形が変わるのか、そのメカニズムから、変化をある程度コントロールするコツ、そして何より、その「歪み」や「変化」をどうやって愛でるか、私の失敗談も交えながら(笑)お伝えします。

 

完璧なシンメトリーの器も美しい。でも、あなただけが作り出せる、世界に一つしかない「ちょっと不完全な器」には、それを超える愛おしさが宿るんです。さあ、あなたも予測不能なドラマを楽しみ、自分だけの宝物を生み出す陶芸の世界へ、一緒に一歩踏み出してみませんか?

陶芸で焼くと形が変わるのは「当たり前」で、むしろそれが「最高」なんです

 

まず、声を大にして言いたいことがあります。もしあなたが陶芸体験で作った作品が、窯から出てきたときに思ったより縮んでいたり、少し歪んでいたりしても、絶対に「失敗した…」なんて思わないでくださいね。それは失敗じゃありません。それは、あなたの作品が粘土という“生き物”と、炎という“自然の力”と対話した結果、生まれた「個性」なんです。陶芸において、焼成による変化は避けて通れない、いわば宿命のようなもの。そして、その宿命を受け入れたとき、陶芸の本当の面白さの扉が開かれる、と私は本気で思っています。

なぜ「当たり前」なの?粘土と炎が起こす壮大なドラマ

そもそも、なぜ形が変わるのか。それは、粘土がただの土くれから、カチンコチンの焼き物、つまり「陶磁器」へと生まれ変わるための、壮大な化学変化のプロセスだからです。あなたがこねている粘土には、目に見えない小さな水の粒子がたくさん含まれています。これが、粘土を柔らかく、好きな形に作れる理由ですね。

 

この水分が、乾燥と焼成という2つの工程で、粘土から完全に抜け出ていきます。まず乾燥で物理的な水分が飛び、次に焼成、つまり窯で焼くことで、粘土の分子構造にがっちり結びついていた水分まで追い出されるんです。水分が抜けた隙間を埋めるように、土の粒子同士がぎゅーっとくっつき、焼き締まっていく。これが「焼成収縮」と呼ばれる現象です。この過程で、作品は全体的に一回り小さくなります。ね、縮むのは当たり前でしょう?

 

さらに、窯の中の温度は1200度以上にもなります。そんな高温の中では、粘土も一瞬、飴のように少しだけ柔らかくなる瞬間があるんです。その時に、重力や、粘土自体が持っている“クセ”によって、ほんの少し歪んだり傾いたりする。これはもう、粘土と炎が繰り広げる一大スペクタクル!私たちがコントロールできない領域で起こる、自然のドラマなんです。だから、変化は「当たり前」。それを前提に楽しむのが、陶芸家への第一歩なんですよ。

「最高」ってどういうこと?予測不能な変化がもたらす唯一無二の価値

じゃあ、その「当たり前」の変化が、なぜ「最高」なのか。それは、その予測不能な変化こそが、あなたの作品を「世界に一つだけのもの」にしてくれるからです。考えてみてください。工場で機械が作ったお皿は、どれも寸分たがわず同じ形をしています。それはそれで素晴らしい技術ですが、そこに「物語」はありますか?

 

あなたの作った湯呑みが、ほんの少しだけ口元が歪んでしまったとします。最初は「あーあ…」って思うかもしれません。でも、毎日使っているうちに、その歪みが不思議とあなたの親指にすっぽりフィットすることに気づくかもしれない。「私のための湯呑みだ…」なんて、愛おしさが爆発する瞬間です。私が初めて作ったお茶碗なんて、見事に楕円形になっちゃいました(笑)。でも、そのおかげでご飯をよそうとき、すごく持ちやすいんです。今では一番のお気に入り。これって、最高の「結果オーライ」だと思いませんか?

 

窯の中で、釉薬(うわぐすり)がどんな風に溶けて、どんな色に変化するかも、完全には予測できません。窯の中の置く場所、その日の天候、炎の当たり具合…。いろんな要素が複雑に絡み合って、想像もしなかった美しい模様が生まれることがあります。これを「窯変(ようへん)」と呼び、昔から陶芸家たちはこの偶然の美を追い求めてきました。狙ってできるものじゃないからこそ、価値がある。予測できないからこそ、窯を開ける瞬間は、宝箱を開けるみたいにドキドキするんです。このスリルと、時々訪れる奇跡みたいな出会い。これこそが、陶芸が最高に面白い理由だと、私は思います。

なぜ?どうして?焼くと形が変わるメカニズムを徹底解剖!

 

「変化するのが面白いのはわかったけど、やっぱりなんでそうなるのか、もっと詳しく知りたい!」うんうん、その探究心、素晴らしいです。理由がわかれば、不安も減りますし、もっと作品作りが楽しくなりますよね。ここでは、あなたの作品に変化をもたらす3大巨頭、「焼成収縮」「粘土の記憶」「重力」について、ちょっとマニアックに、でも分かりやすく解説していきますね!

原因その1「焼成収縮」粘土は焼くと縮むのがお仕事です

さっきも少し触れましたが、一番大きな変化の原因は、この「焼成収縮」です。粘土は焼くと、必ず縮みます。これはもう、そういう生き物なんです。どのくらい縮むかというと、粘土の種類にもよりますが、だいたい10%〜15%くらい。え、結構な割合じゃない?って思いますよね。そうなんです。
例えば、直径20cmのお皿を作ったとしましょう。15%縮むとしたら、焼き上がりはなんと17cm!

 

3cmも小さくなる計算です。これを知らずに「よし、このカレー皿にぴったりのサイズ!」なんて思って作ると、焼き上がったときに「あれ?なんか…こぢんまりしちゃった?」なんてことになります。私も最初の頃、これで何度も「思ったより小さい」事件を経験しました。

 

しかも、この収縮率、粘土の種類によって全然違うんですよ。ザラザラした感じの陶土(とうど)は比較的収縮率が低めですが、白くてすべすべした磁器土(じきど)なんかは、もっとギュッと縮みます。なので、もしあなたが作りたいもののサイズ感が決まっているなら、使う粘土の収縮率をあらかじめ陶芸教室の先生に聞いておくのがオススメです。「この土、どのくらい縮みますかー?」って。それを計算に入れて、完成形より一回り、いや、二回りくらい大きく作るのがコツ。この「縮む分を計算に入れる」という作業、なんだかプロっぽくて、ちょっとワクワクしませんか?

原因その2「粘土の記憶」あなたの手のクセ、全部覚えてますよ

これがまた、面白いやら怖いやらの話なんですけど…粘土には「記憶(メモリ)」があるんです。どういうことかというと、あなたが形を作っているときに加えた力の方向やクセを、粘土はずーっと覚えているんですよ。そして、焼成で粘土が柔らかくなった瞬間に「あ、思い出した!俺、本当はこっちに行きたかったんだ!」とばかりに、元の形に戻ろうとすることがあるんです。これが、歪みの大きな原因になります。

 

例えば、ろくろで器を挽いているとき。うまく中心が出なくて、何度もぐにゃぐにゃーっと形を崩しては、また立て直したりしますよね。その格闘の歴史、粘土は全部記憶してます。表面上は綺麗に整って見えても、粘土の粒子レベルでは「あっちに引っ張られ、こっちに押し込まれた」というストレスが残っている状態。それが焼成の熱で解放されて、歪みとして現れるんです。怖い!

 

手びねりで板状の粘土からお皿を作るときも同じです。粘土を伸ばすときに、均等に伸ばせず、ある一方向だけ強く伸ばしてしまったとします。すると、そのお皿は焼いたときに、その方向に反り返ってしまう可能性が高くなります。粘土って、正直者というか、隠し事ができないんですね(笑)。「あ、ここ、ちょっとごまかしたな」っていうあなたの下心、全部お見通しってわけです。でも、逆に言えば、あなたの手の動き、その瞬間の感情まで、作品に刻み込まれるということ。そう考えると、なんだか愛おしくなってきませんか?

原因その3「重力との戦い」薄い部分、重い部分は要注意!

最後のラスボスは、我らが地球に常に存在する「重力」です。普段はあまり意識しませんが、1200度を超える窯の中では、この重力が作品に牙を剥くことがあります。先ほども言ったように、焼成のピーク時、粘土は一瞬だけですが、少し柔らかくなります。ガラスが溶ける一歩手前、みたいなイメージです。

 

その、ふにゃっとした瞬間に、重力は容赦なく作品にのしかかります。特に影響を受けやすいのが、薄く作ったお皿のフチや、カップの取っ手、急須の注ぎ口のような、本体から飛び出している部分です。自重に耐えきれず、少し垂れ下がってしまったり、傾いてしまったりするんですね。平たいお皿でも、真ん中が少し重力でたわんでしまうこともあります。

 

これを防ぐためには、設計段階である程度の厚みを確保したり、支えが必要な形の場合は「台」や「支柱」を同じ粘土で作って一緒に焼いたりするんですが、これは結構上級者向けのテクニック。初心者のうちは、「ああ、重力に負けちゃったか〜。お疲れ様!」くらいの気持ちで受け入れてあげるのがいいかもしれません。むしろ、その重力によって生まれた、なだらかなカーブが、思いがけず優しい雰囲気を醸し出してくれることも少なくないんです。自然の力には逆らわない。これもまた、陶芸の心得の一つ、なのかもしれませんね。

じゃあどうすればいいの?形が変わりすぎるのを防ぐための実践テクニック

 

「理屈はわかった!でも、やっぱりできるだけ思った通りの形に仕上げたい!」もちろんです。偶然性を楽しむとはいえ、あまりにも原型を留めないほど変化してしまったら、さすがに悲しいですもんね。大丈夫。これからお話しする3つのポイントを意識するだけで、焼成後の変化はかなりコントロールできるようになります。これはもう、陶芸の「基本のキ」。地味な作業に見えるかもしれませんが、愛ですよ、愛。作品への愛を込めて、ぜひ実践してみてください。

テクニック1「土殺しと菊練り」粘土のキゲンをとる最初の儀式

まず、何よりも、とんでもなく大事なのが、粘土を使い始める前の準備運動、「土殺し(つちごろし)」と「菊練り(きくねり)」です。名前がちょっと物騒ですけど(笑)、これは粘土の塊の中に含まれている空気を抜き、全体の硬さや水分量を均一にするための、超重要な作業です。

 

なぜこれが大事かというと、粘土の中に空気が残っていると、焼成中にその空気が熱で膨張して、最悪の場合、作品が「バンッ!」と破裂してしまう原因になるんです。これを「焼成破裂」といって、自分の作品だけじゃなく、周りの人の大切な作品まで道連れにしてしまう大惨事…。考えただけでも恐ろしいですよね。

 

そして、硬さや水分量が均一でないと、どうなるか。もうお分かりですね。収縮率にムラができてしまい、それが歪みや割れに直結するんです。「こっちは硬くてあまり縮まないけど、こっちは柔らかくてすごく縮む」という部分が隣り合っていたら、そりゃあ引っ張り合って歪みますよね。

 

菊練りは、粘土を練っていくと菊の花びらのような模様ができることからその名がついています。正直、これ、めちゃくちゃ難しいです。私も最初は全然できなくて、ただ粘土をいじくり回してるだけでした。でも、陶芸教室の先生にコツを教わって、何度も練習するうちに、だんだんできるようになります。この地道な作業こそが、後の美しい仕上がりを左右する、まさに「縁の下の力持ち」。面倒くさがらずに、粘土としっかり対話する時間だと思って、丁寧に取り組んでみてください。粘土のキゲンを最初にしっかり取っておく。これが一番の近道です。

テクニック2「厚みを均一に」ムラっ気が歪みを生む

次に意識すべきは、作品全体の「厚みの均一さ」です。ろくろでも手びねりでも、これは鉄則。底、側面、フチ、すべての部分の厚みを、できるだけ同じにするよう心がけましょう。なぜなら、厚い部分は乾きにくく縮みにくい、薄い部分は乾きやすく縮みやすい、という性質があるからです。

 

想像してみてください。一枚のお皿なのに、フチだけ紙みたいにペラペラで、真ん中は分厚いステーキみたいだったら…。乾燥の段階でまず、薄いフチだけが先に乾いて縮み始めます。でも、まだ湿っている真ん中は縮まない。この時点で、お互いを引っ張り合う力が生まれて、フチが反り返ったり、ひびが入ったりする原因になります。

 

さらに、これをそのまま焼いたらどうなるでしょう。収縮率の差がさらに大きくなり、歪みはもっとひどくなります。最悪の場合、その歪みに耐えきれず、焼成中にパリンと割れてしまうことも…。特に初心者がやりがちなのが、器の底の部分。ついつい粘土が溜まって、そこだけ分厚くなってしまうんですよね。作品を成形し終わったら、一度ひっくり返してみて、底の厚みをチェックするクセをつけましょう。指で触ってみたり、針で厚みを計ったりする道具もあります。

 

「えー、そんなミリ単位で気にするの?」と思うかもしれませんが、このちょっとした気遣いが、作品の完成度をぐーんと引き上げてくれます。「神は細部に宿る」なんて言いますが、陶芸においてはまさに「美は厚みの均一さに宿る」と言っても過言ではない!…と、私は思っています(笑)。

テクニック3「しっかり乾燥」焦りは禁物!じっくり待つのも愛情です

形を作り、厚みを整えたら、いよいよ乾燥の工程です。そして、ここが運命の分かれ道。早く焼きたい気持ち、痛いほどわかります!「どんな色になるかな〜」「早く使いたいな〜」って、ワクワクしますもんね。でも、ここで焦りは絶対に禁物です。

 

なぜなら、粘土の中に少しでも水分が残ったまま本焼きの窯に入れてしまうと、1000度を超える急激な温度上昇によって、残っていた水分が一気に水蒸気になろうとします。逃げ場を失った水蒸気は、粘土の組織を内側から破壊し…ドカン!はい、先ほどお話しした「焼成破裂」の完成です。悲劇ですよね。

 

そうならないためにも、作品はじっくり、ゆっくり、完全に乾燥させることが何よりも大切です。乾燥期間は、作品の大きさや厚み、季節や湿度によって大きく変わります。小さなぐい呑みくらいなら数日で乾くこともありますが、大きなお皿や壺などは、1週間、2週間、あるいはそれ以上かかることも。特に梅雨の時期なんかは、全然乾かなくてヤキモキします。

 

乾燥させるときのポイントは、風通しの良い日陰で、ゆっくり均一に乾かすこと。直射日光やエアコンの風が直接当たると、表面だけが急激に乾いて、内部との収縮差でひび割れの原因になります。ビニールをふんわりかけて、乾燥のスピードを調整してあげるのも有効なテクニックです。

 

「待つこと」。これも、作品作りのうち。焦る気持ちをぐっとこらえて、あなたの作品が乾いていく様子を、我が子の成長を見守るように、優しく見守ってあげてください。その待った時間も、作品への愛情として、きっと焼き上がりに反映されるはずですから。

「失敗」なんてない!歪みや変化を「味」として愛でる心のススメ

 

さて、ここまで形が変わるメカニズムや、それを防ぐテクニックについてお話ししてきました。でもね、一番伝えたいのはここからです。技術ももちろん大事。でも、それ以上に大切なのは、あなたの「心のもちよう」かもしれません。陶芸の世界には、実は「失敗」という言葉は、あまり似合わないんです。すべての変化は、あなただけの作品が持つ「個性」であり、「味」。そう捉えられるようになったとき、陶芸はもっともっと、あなたの人生を豊かにしてくれるはずです。

完璧なシンメトリーより、ちょっと不完全な「用の美」

お店に並んでいるような、機械で作られた完璧な正円のお皿。それはそれで美しいです。でも、手作りの魅力は、そこにはありません。手で作るからこそ生まれる、ほんのわずかな揺らぎ、不均一さ。そこにこそ、温かみや、作り手の息遣いが感じられるのではないでしょうか。

 

昔、柳宗悦という人が「民藝運動」というものを提唱しました。これは、職人たちが日々使うために作った、名もなき日用品の中にこそ、本当の美しさがある、という考え方です。完璧な芸術品ではなく、暮らしの中で使われることで輝く「用の美」。私は、この考え方が大好きなんです。

 

あなたの作ったカップの口元が、少しだけ歪んでいる。でも、そのおかげで、スープを飲むときに不思議とこぼれにくいかもしれない。お茶碗の高台(底の部分)が、ちょっとだけガタつく。でも、それが机の上でカタカタと鳴る音が、なんだか愛嬌があって好きになるかもしれない。完璧じゃないからこそ、愛しい。完璧じゃないからこそ、あなたの生活にスッと馴染んでくれる。そういうことって、たくさんあるんです。あなたの作品の「不完全さ」を、欠点ではなくチャームポイントとして見つけてあげてください。それは、あなたにしか見つけられない、特別な魅力のはずです。

窯出しのドキドキ感こそ、陶芸の最大のエンターテイメント!

陶芸の全工程の中で、私が一番好きな瞬間はいつかと聞かれたら、迷わず「窯出しの瞬間」だと答えます。何日も、何週間もかけて作った自分の作品たちが、炎の試練を経て、どんな姿で生まれ変わって出てくるのか。窯の扉を開けるあの瞬間は、まるでクリスマスプレゼントの箱を開ける子供のような、あるいは、合格発表を待つ受験生のような(笑)、期待と不安が入り混じった、最高のドキドキ感を味わえます。

 

「うわー!想像以上にいい色になった!」「え、この釉薬の流れ方、奇跡じゃない!?」なんて、歓声を上げることもしばしば。もちろん、その逆もあります。「あれ…なんかイメージと違う色…」「あちゃー、やっぱりちょっと歪んだかー」なんて、ちょっぴり凹むことも。

 

でも、それでいいんです。その一喜一憂こそが、陶芸という趣味の最大のエンターテイメント!思った通りにいかなかったら、「じゃあ次は、釉薬の配合を変えてみよう」「今度はもっと厚みを均一に作るぞ!」と、次への創作意欲がメラメラと湧いてきます。すべてが計算通りに進んでしまったら、きっとこんなに夢中にはなれない。この「ままならなさ」が、私たちを飽きさせず、もっと深く知りたい、もっと上手くなりたい、という沼に引きずり込んでいくんです。

私の「歪み愛」語ってもいいですか?

ちょっとだけ、私の個人的な話をさせてください。私が陶芸を始めて、一番最初に作った記念すべき作品は、何の変哲もない、ただの湯呑みでした。ろくろの上で、先生に手伝ってもらいながら、必死で作ったんです。でも、焼き上がってきたそれは、見事に口元がヘコんで、全体的にちょっと傾いだ、なんとも不格好な姿でした。正直、最初は「がっかり」しました。「私の初作品、これかぁ…」って。

 

でも、家に持って帰って、使ってみることにしたんです。すると、不思議なことに気づきました。そのヘコんだ部分に、お茶を飲むときに自然と親指が収まるんです。傾いだ角度が、持つときに絶妙に手にフィットする。なんだこれ、めちゃくちゃ使いやすいじゃないか…!と。

 

それ以来、その不格好な湯呑みは、私の一番のお気に入りになりました。お店で買ったどんなお洒落なカップよりも、手に取る回数が圧倒的に多い。見るたびに、「ああ、この時、ろくろにてこずってたな」「この歪みが、今の私の相棒なんだな」と、作ったときの記憶が蘇ってきて、なんとも言えない愛おしい気持ちになるんです。もし、あの湯呑みが完璧な形で焼き上がっていたら、ここまで深い愛着は湧かなかったかもしれません。この「歪み」が、私とこの湯呑みだけの、特別な絆になったんです。だから、あなたの作品に生まれた変化も、きっとあなたとの絆の証になる。私は、そう信じています。

まとめ さあ、予測不能な変化を楽しむ陶芸の世界へ飛び込もう

 

ここまで、陶芸で焼くと形が変わる理由と、その魅力について、私の熱量に任せて語ってきました。もう一度お伝えしますが、「焼くと形が変わる」ことは、陶芸における失敗ではありません。それは、粘土が焼き物に生まれ変わるための、ごく自然で、必然的なプロセスなんです。

 

粘土に含まれる水分が抜けて縮む「焼成収縮」、あなたの手のクセを覚えている「粘土の記憶」、そして窯の中で作用する「重力」。これらの要因が複雑に絡み合って、あなたの作品に唯一無二の表情を与えてくれます。もちろん、「菊練り」で土の機嫌をとり、「厚みを均一」にし、「じっくり乾燥」させることで、大きな変形はある程度防ぐことができます。その技術を磨くのも、陶芸の大きな楽しみの一つです。

 

でも、どうか忘れないでください。最後の仕上げをするのは、あなたではなく、窯の中の「炎」です。私たちにできるのは、そこまでの準備を丁寧に行い、あとは「頼んだぞ!」と炎に委ねることだけ。その、人間の力が及ばない領域があるからこそ、陶芸は面白い。思い通りにいかないからこそ、愛おしい。窯から出てきた作品が、たとえ少し歪んでいたとしても、それがあなたの手の跡、かけた時間、そして炎との対話の記録そのものなんです。完璧なものを目指さなくていい。不完全さを、あなただけの「味」として楽しんでみてください。

 

さあ、どうですか?粘土に触ってみたくなりませんか?きっと、あなたの手から、あなただけの物語を持つ、かけがえのない宝物が生まれるはずです。予測不能な変化に満ちた、奥深い陶芸の世界が、あなたを待っていますよ。