「陶芸体験で作った作品って、持ち帰りできるの?」
もしあなたが今、そう思ってこのページにたどり着いたのなら、答えは「イエス」です!
できます、できますとも!自分で作った、世界に一つだけの器を、ちゃんと自分のものにできます。
ただし、ちょっとだけ注意点が。それは「その日すぐには持ち帰れない」ということ。
でもね、これがまた良いんですよ。待っている時間も、陶芸体験の醍醐味の一つなんです。
私は正直、絵も描けないし、工作なんて小学生以来。そんな超がつくほどの不器用人間です。
でも、そんな私でも、ちゃんと素敵な(と自分では思っている)お茶碗を作ることができました。
そして、約1ヶ月半後、忘れた頃に我が家にやってきたその子と対面した時の感動といったら…!
この記事では、陶芸ってなんだか難しそう、自分には無理かも…なんて思っているあなたに向けて、陶芸体験の作品は「いつ」「どんな風に」持ち帰れるのか、そして不器用な私が実際に体験した全工程と、手作りの器が暮らしにもたらしてくれた、ささやかだけど最高に幸せな変化について、余すところなくお伝えします。
この記事を読み終わる頃には、きっと近所の陶芸教室を検索したくてたまらなくなっているはずですよ!
さっそく結論から言っちゃいますが、陶芸体験で作った作品は、バッチリ持ち帰ることができます。安心してください。自分でこねこねして形作った愛おしい作品が、誰かに取られちゃうなんてことはありません。ただ、多くの人が勘違いしがちなのが、「作ったその日に持って帰れる」と思っていること。実はこれ、違うんです。ほとんどの陶芸体験では、作品は後日、郵送などで自宅に届くシステムになっています。
「えー、すぐもらえないの?」って、ちょっとガッカリしました?わかります、その気持ち。私も最初はそうでした。でも、なぜ当日持ち帰れないのか、その理由を知ると「なるほど!」と納得するし、むしろ待つ時間こそが最高のスパイスになるってことに気づくはずです。
陶芸体験で作ったばかりの作品って、まだただの「濡れた粘土」なんです。ふにゃふにゃで、ちょっと力を加えただけですぐに形が崩れてしまう、とてもデリケートな状態。これをカチカチの丈夫な「陶器」にするためには、いくつかの大事な工程を踏む必要があるんです。これがね、結構時間がかかるんですよ。
まず、形作った作品を、風通しの良い場所でじーっくりと乾かします。これを「乾燥」といいます。ここで焦ってはいけません。水分が残ったまま次の工程に進むと、窯で焼いたときに「バン!」と音を立てて割れてしまう悲劇が…。作品の大きさや厚み、その日の湿度にもよりますが、完全に乾くまでには数日から一週間以上かかることもあります。
しっかり乾いたら、いよいよ窯に入れて焼いていきます。でも、一回焼いて終わりじゃないのがまた奥深いところ。まずは800℃くらいの比較的低い温度で「素焼き(すやき)」をします。これによって、粘土がもろい状態から、水分を吸う丈夫な状態に変わります。
素焼きが終わったら、いよいよ色付けです。「釉薬(ゆうやく、または、うわぐすり)」と呼ばれる、ガラス質の液体をかけていきます。この釉薬が、焼くことで溶けて、皆さんがよく知るツルツルした陶器の表面になるわけです。そして最後に、1200℃以上の高温で「本焼き(ほんやき)」を行います。この高温によって釉薬が溶けて土と一体化し、強度も増して、ようやく一つの「作品」として完成するのです。…ね?聞いているだけで気が遠くなりそうでしょ?こんなに手間暇がかかっているなんて、職人さんには本当に頭が下がります。
そんなわけで、作品が完成して手元に届くまでには、だいたい1ヶ月から、長いところだと2〜3ヶ月かかるのが一般的です。正直、長いですよね。私も最初は「そんなに待つの!?」って思いました。でも、この待つ時間こそが、陶芸体験のもう一つの楽しみ方なんです。
体験が終わって日常に戻ると、忙しさもあって、正直ちょっと陶芸のことなんて忘れかけたりするんですよ。「あ、そういえばお茶碗作ったな…」なんて思い出すくらい。でも、それでいいんです。
そしてある日、突然その時はやってきます。ピンポーン、とチャイムが鳴って、配達員さんから手渡される、ちょっとずっしりした段ボール箱。その瞬間に、あの日の記憶が一気に蘇るんです!「あ!きた!ついにきたー!」って。
箱を開ける時のドキドキ感、分かります?クリスマスプレゼントを開ける子供みたいに、丁寧に、でも焦る気持ちで梱包材をどかしていくと…そこには、紛れもなく自分が作った、あのいびつな形をした器が、ちゃんと「陶器」の顔をして鎮座しているんです。
「私が選んだあの釉薬、どんな色になったかな?」「思ったより小さくなった?」「ちゃんと割れずに焼けてるかな?」そんな期待と不安が入り混じった気持ちで待つ時間。そして、忘れた頃に届くサプライズ。この一連の流れ全部が、最高のエンターテイメントだと思いませんか?ポストに不在票が入ってた時の「なんだろう?」っていうワクワク、あれの最上級バージョンですよ!
「理屈は分かったけど、実際どんな感じなの?」と思いますよね。うんうん。そこで、ここからはこの私が、実際に陶芸体験に参加した時の流れを、恥をしのんで全部お見せしようと思います。これから体験するあなたの、ちょっとした予習になれば嬉しいです。本当に、楽しかったんですよ…!
私が陶芸に目覚めたのは、とある雑誌で見た「丁寧な暮らし特集」がきっかけでした。手作りの器に盛られた、なんてことない煮物。それがもう、めちゃくちゃ美味しそうに見えたんです。「私も、こんな器でごはんが食べたい…!」その一心で、ネットの海へダイブ。
「陶芸体験 東京」とかで検索すると、まあ出るわ出るわ。おしゃれな街のど真ん中にあるスタイリッシュな工房から、郊外の自然に囲まれたアットホームな工房まで。迷いますよね、これは。私が選んだのは、都心から電車で1時間ほどの、ちょっとレトロな古民家を改装した工房でした。決め手は、ウェブサイトに載っていた先生の笑顔と、なんだか温かそうな作品たちの写真。直感で「ここだ!」って。
プランは「電動ろくろ体験」。料金は5,000円くらいで、お茶碗か湯呑みを1つ作れて、焼成代と送料も込み、という分かりやすいものでした。早速、ウェブサイトの予約フォームからポチッ。もうこの時点で、私の週末は約束されたようなものです。
当日の服装は「汚れてもいい服」と書いてありましたが、一体どれくらい汚れるのかが未知数。結局、着なくなったTシャツとジーンズという、万全の体制で臨みました(結果、エプロンを貸してもらえたので、そこまで神経質にならなくても大丈夫でした)。あと、これ大事なポイントですが、爪は短く切っていきました。長いと粘土に跡がついちゃうし、間に土が入ったら大変ですからね!
工房の引き戸をガラガラと開けると、ひんやりとした土の匂いがふわりと香りました。うわー、本物だ。もうこれだけでテンションが上がります。優しそうな先生に挨拶をして、エプロンを装着。いよいよ、私の目の前の電動ろくろに、どーん、と粘土の塊が置かれました。
まずは先生がお手本を見せてくれます。濡らした手で粘土に触れ、ろくろのスイッチを入れると…うにょーん、と粘土がまるで生き物のように形を変えていくんです。すっと中心に伸びたかと思うと、指先一つでくびれができ、あっという間にお椀の形に。え、魔法?魔法なの?あまりの滑らかさに、思わず「すご…」と声が漏れました。
「はい、じゃあやってみましょうか」。先生の優しい声に我に返り、恐る恐る粘土に手を添えます。うわ、冷たくて気持ちいい!なんだこの感触!子供の頃の泥遊びを思い出します。先生に教わった通り、両手で包み込むように力を加えるのですが…言うこと聞かない!この土、全然言うこと聞いてくれないじゃん!
中心がズレてぐにゃぐにゃになったり、変なところに力が入って歪んだり。ろくろの上で粘土が暴れまくります。「あーーー!」「先生たすけてー!」と情けない声を上げる私。でも、先生は笑いながら「大丈夫ですよー、力抜いてー」と絶妙なタイミングで手を添えて修正してくれます。まさにゴッドハンド。神…!
何度も失敗して、そのたびに先生に助けてもらいながら、格闘すること約30分。なんとか、お茶碗…と呼んでいいのか分からない、ちょっといびつな物体が完成しました。でも、不思議なんです。自分で作ったものだからか、この歪みすら愛おしく見えてくる。むしろ、この不格好さが「味」だよね!なんてポジティブに思えるから不思議です。この達成感、半端ないですよ。
形作りが終わったら、次のお楽しみ「色選び」です。先生が「これが釉薬(ゆうやく)の見本です」と、いろんな色のついた陶器の板を見せてくれました。白、黒、青、緑、黄色、ピンク…すごい、こんなに種類があるんだ!
ここでまた一つ、驚きの事実が。「この見本の色と、実際に塗る液体の色は全然違うんですよ。焼くと化学変化でこの色になるんです」と先生。え、どういうこと?見せてもらった釉薬の液体は、どれも灰色とか茶色っぽい、正直言って地味な色ばかり。これが焼くと、あんな鮮やかな青や深みのある緑になるなんて…。詐欺じゃない!?(もちろん良い意味で)。
これはもう、一種の賭けですよね。自分の作品が、最終的にどんな色合いになるのかは、窯から出てくるまで分からない。この不確定要素が、また面白い!
ずらりと並んだ色見本を前に、私は真剣に悩みました。「このいびつな形には、やっぱり渋い織部(おりべ)の緑かな…」「いや、でも思い切って真っ白な粉引(こひき)もモダンでいいかも…」「あ、この優しい感じのピンクも捨てがたい…」なんて、脳内会議は白熱。
最終的に私が選んだのは、少しざらっとした手触りになるという、深みのある瑠璃色(るりいろ)の釉薬。完成形を想像しながら「この色でお願いします!」と先生に託しました。形作りも楽しかったけど、この色選びも、第二の創作活動と言えるくらい、ワクワクする時間でしたね。ちなみに、プラン内では1点分の焼成代が含まれていましたが、もし2個目も焼きたい場合は追加料金(2,000円くらいでした)が必要、というシステムでした。今回は1点入魂です!
ここまで私の体験談を語ってきましたが、せっかくなので、これから陶芸体験に行くあなたが、もっと楽しむための、そして「ああすればよかった…」と後悔しないための、ちょっとしたコツを伝授させてください。先輩風を吹かせますよー!
まず、どんな体験がしたいのかを明確にすることが大事です。陶芸体験には大きく分けて「電動ろくろ」と「手びねり」の2種類があります。
「電動ろくろ」は、私がやったみたいに、くるくる回る機械の上で形を作っていく方法。THE・陶芸!って感じがして、憧れますよね。ただ、さっきも書いた通り、初心者にはかなり難しいです。遠心力との戦いです。でも、先生がしっかりサポートしてくれるので、最終的にはちゃんと形になりますし、あの「ろくろ回してる感」は一度味わってみる価値アリです!
一方の「手びねり」は、粘土を紐状にして積み上げたり、塊からくり抜いたりして、自分の手だけで形を作っていく方法。電動ろくろよりも直感的に形を作りやすいので、初心者の方やお子さんにはこちらの方が向いているかもしれません。マグカップの取っ手とか、動物の置物とか、自由な発想で作りやすいのも魅力ですね。
どっちが良い悪いではなく、どっちが「やってみたいか」で選ぶのが一番です。
それから、料金体系のチェックも忘れずに。プラン料金に何が含まれているのか(焼成代、釉薬代、送料など)は、しっかり確認しましょう。2個以上作りたい場合や、特殊な釉薬を使いたい場合に追加料金がかかることもありますからね。
あとは、やっぱり教室の雰囲気。インスタグラムや公式サイトで、先生や他の生徒さんの作品を見てみるのがおすすめです。自分の好みに合う作風の教室を選ぶと、より満足度の高い体験ができるはず。「なんか、ここの器、好きだな」っていう直感を信じてみるのも、良い手だと思いますよ。
教室選びが終わったら、あとは当日を待つだけ!ですが、当日に気をつけておくと、よりスムーズに楽しめるポイントがいくつかあります。
まず、さっきも書きましたが「爪は短く切っていく」。これは本当に絶対です。粘土ってすごく繊細で、ちょっと爪が当たっただけで、くっきりと線が入ってしまうんです。それが味になることもあるけれど、意図しない傷はやっぱり気になりますからね。
次に「アクセサリーは外していく」。特に指輪やブレスレットは、作業の邪魔になるし、粘土まみれになってしまいます。万が一、粘土に混入してしまったり、作品を傷つけたりしたら大変。腕時計も外しておいた方が安心です。ポケットにしまっておくか、カバンに入れておきましょう。
そして、一番大事な心構え。それは「うまく作ろうとしすぎないこと」。
分かりますよ、せっかく作るなら綺麗で完璧なものを作りたいって気持ち。でも、陶芸の魅力は、完璧じゃないところにある、と私は思うんです。ちょっと歪んでいたり、指の跡が残っていたり。そういうところにこそ、手作りならではの温かみや、その人らしさが宿るんじゃないかなって。
完璧なシンメトリーの器が欲しければ、お店で買えばいい。でも、陶芸体験で作るのは、世界に一つだけの「自分の作品」です。楽しむ気持ちを一番大切にしてください。そして、分からないことや困ったことがあったら、遠慮なく先生に聞きましょう!「こんな初歩的なこと聞いたら迷惑かな…」なんて思う必要は一切ありません。先生は、私たちが楽しんで、満足のいく作品が作れるように手伝ってくれるプロですからね。
さて、体験を終え、釉薬を選び、あとは待つだけ。そして約1ヶ月半後、ついにその日はやってきました。手作りの器が、私の日常にどんな魔法をかけてくれたのか。そのお話をさせてください。
在宅勤務中、インターホンが鳴りました。受け取ったのは、ずっしりと重い小さな段ボール。差出人は、あの陶芸工房!「きたーーーー!」と思わず声が出ました。
仕事そっちのけで、カッターを片手にいざ「開封の儀」。丁寧に詰められた緩衝材を一つ一つ取り除いていく、このもどかしい時間。そして、新聞紙にくるまれた、ごろんとした塊が見えた瞬間、心臓がドキッとしました。
そっと新聞紙を剥がしていくと…そこに現れたのは、深い瑠璃色をまとった、紛れもない、私が作ったあのお茶碗でした。
「うわ…!すごい…!」
思わずため息が出ました。体験の時に見た、あの地味な色の液体が、こんなにも美しい、吸い込まれそうな深い青色に変わっている。表面には、私が悪戦苦闘した指の跡が、釉薬の濃淡となって景色を作り出している。高台(器の底の部分)のざらりとした土の感触。手にしっくりと馴染む、不格好だけど優しい重み。
「え、私が作ったんだよね、これ…?」
お店で売っているどんな高級な器よりも、何倍も何十倍も、輝いて見えました。自分の手からこんなものが生まれたという事実が、信じられなくて、でも嬉しくて。しばらくの間、ただただ掌に乗せて、いろんな角度から眺めていました。
その日の夜、早速そのお茶碗を使ってみることにしました。炊きたてのご飯を、そっとよそう。ただそれだけなのに、なんだかいつもよりご飯がツヤツヤして見えるから不思議です。
メニューは、スーパーで買ってきたお刺身と、インスタントの味噌汁。はっきり言って、手抜きごはんです。でも、自分で作った器に盛り付けると、どうでしょう。なんだか、すごく丁寧に作ったごはんのように見えるじゃありませんか。いつものお醤油も、小皿(これは既製品)に出すだけで、料亭に出てくるそれみたいに見える(完全に気のせいですけど!)。
この器で食べると、なぜか食事の時間がゆっくり流れるような気がします。一口一口、ちゃんと味わって食べよう、という気持ちになる。普段ならスマホを見ながら済ませてしまうような食事も、この日は器を眺めながら、静かにいただきました。
それ以来、このお茶碗は私の一軍になりました。朝は卵かけご飯、夜は具沢山の豚汁。何を盛っても、なんだか様になる。この器を使いたいから、ちょっとだけ丁寧にご飯を作ろうかな、なんて思う日も増えました。モノを大切にするって、こういうことなのかもしれない。自分で作ったから、絶対に割りたくない。だから、洗い方も自然と丁寧になります。
たった一つの器が、私の殺伐とした食生活に、彩りと、ほんの少しの心の余裕をもたらしてくれた。これは、陶芸体験がくれた、作品以上の、大きな大きな贈り物でした。
「陶芸体験は持ち帰りできるの?」という素朴な疑問から始まったこの記事も、そろそろ終わりです。
結論をもう一度。陶芸体験で作った作品は、後日ちゃんと持ち帰ることができます。そして、その手作りの器は、あなたの毎日を、きっと今よりちょっとだけ豊かにしてくれます。
でも、私がこの体験を通して本当に持ち帰ったものは、あの瑠璃色のお茶碗だけじゃなかったのかもしれません。
ひんやりとした土の感触。うまくできなくて笑ってしまった時間。何色にしようか真剣に悩んだ時間。ろくろと向き合った、あの無心になれた時間。そして、作品が届くのをドキドキしながら待っていた時間。完成した器で、初めてご飯を食べた時の、あの小さな感動。
陶芸体験とは、完成した「モノ」を持ち帰るだけではなく、そうした一連の豊かな「時間」そのものを持ち帰る体験なんだと、私は思います。
毎日パソコンやスマホと向き合って、目まぐるしく過ぎていく日々の中で、土という自然のものに触れ、自分の手で何かを生み出す時間は、最高の癒やしであり、贅沢な遊びです。
もしあなたが「何か新しいことを始めてみたいな」「毎日がちょっと退屈だな」と感じているなら、ぜひ、一歩踏み出してみてください。不器用だって、センスがなくたって、全然大丈夫。私が保証します。
まずは、あなたの街の陶芸工房を、検索してみませんか?きっと、素敵な出会いが待っていますよ。